最新記事

米朝戦争

アメリカは核武装した北朝鮮との共存を選ぶ

2017年11月29日(水)19時26分
ロバート・E・ケリー(釜山国立大学准教授)

それ以降アメリカは、核開発を放棄させるのに軍事力を行使しようとしたことはない。中国が1960~70年代に核ミサイルを開発した時、中国は文化大革命で混乱の最中にあったにも関わらず、アメリカは干渉しなかった。パキスタンが1990年代に核武装した時もそうだ。当時も今も、パキスタンはイスラム原理主義勢力の拠点としてアメリカに深刻な脅威を与えているにも関わらず、見逃した。

スターリン主義や毛沢東主義、イスラム原理主義など、イデオロギー的にも対立するこれらの国々が核兵器を獲得する過程では、「狂信者」が核を持つことに対する危機感が国内で強まった。

だが軍事介入という選択肢はそれ以上にあり得なかった。もし中国を空爆すれば、東アジア全体が焦土と化しただろう。パキスタンの核兵器を奪うために米軍の特殊部隊を投入するのは、自殺行為に近かった。「イスラム過激派」を標的にした攻撃は、パキスタン周辺地域のイスラム教徒の反乱を招いたかもしれない。そう考えると、新たな核保有国と共存するリスクより、軍事力行使に伴うリスクの方が高いと、米政府関係者は理解した。以降、米政府はその教訓をを外交に反映してきた。

北朝鮮でも同じことになるのはほぼ間違いない。今回も「狂信者」が核兵器を保有し、核戦争が勃発する悪夢のシナリオが巷には溢れている。だが北朝鮮が他国を攻撃するために核兵器を使用する兆候はほとんど見られない。もしアメリカを核攻撃すれば、あっという間に北朝鮮が崩壊するのは目に見えている。

北朝鮮のエリートは自殺ではなく、生き残りを望んでいるようだ。実際、イラクのサダム・フセイン元大統領やリビアの元最高指導者ムアンマル・アル・カダフィ大佐が核兵器を保有していれば、アメリカに打倒されることなく今日まで生き延びていたはずだと、北朝鮮は主張している。

やれば全面戦争になる

北朝鮮を攻撃するという選択肢もアメリカにはあるが、実行すれば米中戦争や極東アジアででの核兵器使用に発展する恐れが高まる。北朝鮮は1968年以降、少なくとも6回、重大な挑発行為を仕掛けてきたが、アメリカは決して反撃しなかった。理由は当時も今も同じだ。北朝鮮が報復に出れば、通常兵器だけで韓国の首都ソウルを壊滅できる。中国とは相互防衛条約を締結している。アメリカが北朝鮮を空爆すれば、国民を人間の盾に使って妨害するだろう。

北朝鮮は数十年前から戦時に備えたトンネルを採掘しているため、米軍の空爆は大規模にならざるを得ず、実質的な全面戦争に発展するだろう。北朝鮮を相手に限定攻撃で済ませる選択肢は存在しない。すでに北朝鮮は核兵器を保有しているため、アメリカの軍事行動に核兵器で反撃してくる恐れもある。

一言で言えば、北朝鮮に対する攻撃はリスクがあまりに高過ぎる。北朝鮮の核・ミサイル技術が劇的に進歩した今、そのリスクはさらに跳ね上がった。たとえ政治指導者が表向きには認めなくても、ソ連、中国、パキスタンへの対応と同様、アメリカは核武装した北朝鮮と共存する方法を学ぶはずだ。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

バイデン氏、資金集めパーティー開始へ 24年選挙に

ビジネス

南ア訪問の米財務長官、中ロとの軍事演習計画への懸念

ビジネス

日本の物価、現時点でデフレではない状況が継続=岸田

ワールド

英財務相、成長促進へ生産性向上に意欲 増税方針は堅

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:実録 中国海外警察

2023年1月31日号(1/24発売)

他国の主権を無視し現地の民主派を取り締まる中国「海外110」の驚くべき実態を暴く

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    ビリー・アイリッシュ、二度見されそうな「R指定Tシャツ」で街を闊歩

  • 2

    日本が「新しい戦前」にあるかは分からないが、戦前とここまで酷似する不気味な符合

  • 3

    人を襲った...ではなく──溺れた少年の遺体、ワニが家族に届ける「噛まれた跡はない」

  • 4

    「笑いすぎて涙出た」との声多数...初めて猫の肛門を…

  • 5

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 6

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...…

  • 7

    「この年齢の子にさせる格好じゃない」 米セレブ娘の…

  • 8

    かつてはオバマ夫妻と「同列」だったヘンリー&メー…

  • 9

    米人気モデル、ビーチで「ほとんどヒモ」な水着姿を…

  • 10

    「そんなに透けてていいの?」「裸同然?」、シース…

  • 1

    5万年に1度のチャンス、肉眼で見える緑の彗星が接近中

  • 2

    ビリー・アイリッシュ、二度見されそうな「R指定Tシャツ」で街を闊歩

  • 3

    「この年齢の子にさせる格好じゃない」 米セレブ娘の「肌見せすぎ」ファッションに批判

  • 4

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...…

  • 5

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 6

    日本が「新しい戦前」にあるかは分からないが、戦前…

  • 7

    人を襲った...ではなく──溺れた少年の遺体、ワニが家…

  • 8

    ドイツの最強戦車「レオパルト2」を大量供与しなけれ…

  • 9

    米人気モデル、ビーチで「ほとんどヒモ」な水着姿を…

  • 10

    「笑いすぎて涙出た」との声多数...初めて猫の肛門を…

  • 1

    5万年に1度のチャンス、肉眼で見える緑の彗星が接近中

  • 2

    米人気モデル、ビーチで「ほとんどヒモ」な水着姿を披露して新年を祝う

  • 3

    飼い主が目を離した隙にハンバーガーを食べ、しらを切る犬の表情がこちら

  • 4

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...…

  • 5

    ビリー・アイリッシュ、二度見されそうな「R指定Tシ…

  • 6

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 7

    現役医師が断言「血液型と性格は関係ないし、自分の血…

  • 8

    【閲覧注意】ネパール墜落事故、搭乗客のライブ配信…

  • 9

    「そんなに透けてていいの?」「裸同然?」、シース…

  • 10

    「バンコクのゴミ捨て場で育った......」 ミス・ユ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
羽生結弦アマチュア時代全記録
CCCメディアハウス求人情報
お知らせ

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月