最新記事

人権問題

中国、党大会中の言論統制を強化 人権活動家に「休暇」強制

2017年10月24日(火)17時23分

当局を避け、自ら旅行の計画を立てた活動家もいる。

10年以上にわたり中国東部にある太湖の汚染問題を訴えてきた江蘇省無錫市の環境活動家、呉立紅氏は先週、公安当局から電話があり、強制休暇に連れて行くと告げられた、とロイターに明かした。

だが呉氏はすでに、公安当局を避けて北京から遠く離れた東部沿岸部の浙江省に友人を訪ねていた。

「第16回、17回、18回の党大会では、強制休暇を取らされたり、拘束されたり、自宅軟禁されて発言を禁じられたりした」と、呉氏は言う。「今回は、彼らなしで旅行に出ることにした」

公安部からは、「休暇」に連れて行けるよう1度無錫市に戻ることを求められたが、呉氏は、党大会が終わるまで友人と一緒に過ごすと説明して断ったという。今は、公安部からの電話を避けている。

ロイターは,彼の話を独自に確認することはできなかった。中国公安部は、電話番号やファクス番号を公表しておらず、ウェブサイトもない。

草の根が狙われる

習近平国家主席は、2012年に権力の座について以降、人権派弁護士や活動家への締め付けを強化しており、数十人を拘束。人権擁護団体は、組織的に中国の活動家をつぶそうとしていると糾弾する。

新たに導入されたインターネットの言論統制には、たとえ私的なグループチャットであっても批判的コメントに対するユーザーの責任を問う規則や、規制を迂回しようとする技術の取り締まり強化などがある。

香港の民間団体「中国維権律師関注組」のKit Chanディレクターは、 活動家が拘束された最近ケースのいくつかは、当局の取り締まりの新たな方向性を示していると語る。これまでの民主活動家に加え、特定の市民権に特化した小規模な団体も狙っているという。

例えば、南部広州省を拠点とする草の根組織「ヒューマン・ライツ・キャンペーン・イン・チャイナ」を設立したZhen Jianghua氏が、9月1日に珠海市で拘束された。同氏に近い関係筋がロイターに明かした。

公安部に草の根団体を狙った取り締まりについてファックスでコメントを求めたが、回答がなかった。珠海市公安部の電話に出た人物は、Zhen氏の件は把握していないと述べた。

(翻訳:山口香子 編集:下郡美紀)

Christian Shepherd

[北京 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中