最新記事

ハリケーン

教訓は生かされたか? カトリーナ取材記者が見たハービー被災地

2017年9月1日(金)16時58分

8月30日、米テキサス州ヒューストンで大型ハリケーン「ハービー」の避難所として使われているコンベンションセンターで、カトリーナを体験したリアン・バーバーさんと出会った。カトリーナの教訓は生かされているのか。写真左は、カトリーナの被災地を取材するブライアン・テブノ記者。ルイジアナ州セントバーナード郡で2005年8月撮影。提供写真(2017年 ロイター/Courtesy of Ted Jackson/The Times-Picayune/Handout via REUTERS)

大型ハリケーン「ハービー」から避難してきた約1万人が集まる米テキサス州ヒューストンのコンベンションセンターで、リアン・バーバーさんと話をするうちに、ハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ州ニューオーリンズを襲った12年前のちょうどその日、私たちは2人とも同市の第9地区にいたことが分かった。

バーバーさん(36)はかつて、ニューオーリンズの工業水路の東にあるフォーストール・ストリートに住んでいた。当時、工業水路の堤防が決壊し、大量の水が貧困層が暮らす同地区に押し寄せ、壊滅的被害をもたらした。

彼女が発作を起こしたのは絶妙なタイミングだった。

カトリーナがニューオーリンズを直撃する直前、バーバーさんはアップタウンにあるトゥーロ病院に運ばれた。同地区はその後、浸水しなかった数少ない貴重な地域の1つとなる。てんかん持ちで、21歳のときの自動車事故のせいで障害を抱えていたバーバーさんは、入院していなければ洪水で確実に命を落としていただろう。

カトリーナの暴風が最悪な状況を脱したころ、私はアップタウンに近いタイムズ・ピカユーン紙のオフィスから工業水路にかかる橋へと向かった。そこで2005年8月29日の午後、壊滅的な洪水を目にしたのだった。

乗り込んだ民間の救助ボートは、フォーストール・ストリートを抜けながら、人や大型犬、バッグに詰め込まれた猫たちを屋根や2階から救出していた。

「死者が大勢いるだろう」。セント・クロード・アベニューに向かう途中で、ボートの責任者ジェリー・レイズさんは、正確にこう予想した。

バーバーさんは助かったが、天地がひっくり返った心境だった。病院が避難することになったとき、職員がこう言ったからだ。

「安全な場所にお連れします。スーパードームに」

そこで電気も水道もない1週間を過ごした後、バーバーさんはバスでテキサス州ヒューストンに搬送されたという。以来、同市に暮らすバーバーさんは、新たな歴史的洪水のトラウマに直面している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中