最新記事

外交

トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

2017年7月21日(金)16時00分
ジュリア・グラム

今年2月、フロリダ州のマールアラーゴでトランプ夫妻を夕食を共にした安倍夫妻 Carlos Barria-REUTERS

<G20の夕食会で隣りに座った安倍昭恵夫人が「ハローさえ言わない程」だったと言ったトランプはアメリカでバッシングを受け、昭恵を「英雄視」する声に押され気味>

今月ドイツ・ハンブルグで開催された20カ国・地域(G20)首脳会談後の7日の夕食会で、ドナルド・トランプ米大統領は、隣の席に座っていた日本の安倍昭恵・首相夫人が「英語を全く話さなかった」と発言したため、異論が噴出している。

7月19日付のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューでトランプは、昭恵が「『ハロー』も言わないほど」英語を話さなかったので、世界の首脳とそのパートナーが親交を深め合った2時間近くの間、昭恵との間には会話がまったく欠けていた、と話した。トランプによれば、夕食会そのものは和やかに進行したが、コミュニケーションは困難だったという。

「日本語の通訳が1人いたが、もしいなかったらもっと(会話は)大変だったろう」と、トランプは話す。「それでも彼女はとても素敵な女性で、夕食会は楽しかった。すべてはうまく行った」

だが、問題が1つ。昭恵は本当は英語を話せるはずだ、ということだ。

インタビューが掲載された翌日、ある動画がネット上で拡散された。2014年にニューヨークで開催された国際シンポジウムで、昭恵が日本の海洋環境について基調スピーチをする様子が映っている。昭恵は15分間のスピーチを読み上げ、笑顔で一礼し、「サンキュー」と締めくくっている。

「昭恵が英語を話せないはずはない」の根拠

動画が拡散され、ジャーナリストがトランプの主張に反論するにつれ、昭恵を「英雄視」する人々も現れた。

ニューヨーク・タイムズの東京支局長モトコ・リッチは、トランプの発言を「見当違い」とツイート。ニュースサイト「デイリー・ビースト」の記者、スペンサー・アッカーマンは、夫の安倍晋三首相がかつて米議会で英語で演説したことから、「妻の昭恵も『ハロー』くらいは知っているはず」と書いた。極めつけに、英ガーディアン紙のコラム二スト、ジェシカ・バレンティが、「トランプとの会話を避けるために、2時間近く英語を話せないふりをした」、という自説を展開した。

夕食会の席上、昭恵とトランプの間で本当に何があったかはわからないが、その間、トランプは席を立ってプーチンと1時間近く話し込んでいる。非公式で友好的で、安全保障上の慣習に反してアメリカ側の通訳も挟まないお喋りだった。

プーチンとの会話を「密談」と批判されたトランプは、昭恵夫人とほとんど話せなかったのを彼女の英語のせいにしようとしているのかもしれない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪6月失業率は3年半ぶり高水準、8月利下げ観測高ま

ビジネス

アングル:米大手銀トップ、好決算でも慎重 顧客行動

ワールド

WTO、意思決定容易化で停滞打破へ 改革模索

ビジネス

オープンAI、グーグルをクラウドパートナーに追加 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 9
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中