最新記事

中国

中国が「くまのプーさん」を検閲で禁じたもう1つの理由

2017年7月19日(水)19時31分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

英フィナンシャル・タイムズはサイトで、習近平とバラク・オバマ、プーさんとティガーの写真を組み合わせて掲載した

<習近平国家主席と似ているディズニーの人気キャラクターが中国で禁止された。確かに共産党大会が秋に近づいており、中国では政治的に敏感な時期だが、なぜ今だったのか>

ぽっこりしたお腹、のんびりした性格だけど蜂蜜には目がなくて、クリストファー・ロビンの永遠の友達――イギリスの児童作家A・A・ミルンが生み出し、ディズニーのアニメーションで有名になった「クマのプーさん」は、世界中で愛されるキャラクターだ。ただし、中国以外で。

英フィナンシャル・タイムズは7月16日、中国のソーシャルメディア新浪微博(Sina Weibo)でプーさんの中国語訳である「維尼熊(ウェイニーション)」や「小熊維尼(シアオションウェイニー)」といった言葉が検索できないNGワードになっている、と報じた。微信(WeChat)でもプーさんのGIFが削除された。

かわいいプーさんがネットから消された原因ははっきりしない。ただ、思い当たる原因が1つある。その容姿があまりに習近平(シー・チンピン)国家主席に似ている点だ。

今年秋、中国は5年に1回の共産党大会を迎える。近づく政治の季節を前に、政府高官たちが何かと過敏になり、「ネット検閲がエスカレートしている」「『主席について何も語るな』が新たな鉄則になっている」と、フィナンシャル・タイムズは書いた。いわば、中国共産党版「忖度」だ。

「プーさん」が削除されたのは初めてではない

実際、政治の季節は早くも暴風雨の様相を見せ始めている。次期トップ候補の1人とみられていた重慶市党書記の孫政才(スン・チョンツァイ)が7月15日に失脚し、党の規律に違反して調査を受けている、と米ブルームバーグが報じている。

【参考記事】次期国務院総理候補の孫政才、失脚?----薄熙来と類似の構図

ただし、「習とプーさん」が騒ぎになったのは今回が初めてではない。2013年の米中首脳会談では、習とバラク・オバマ米大統領(当時)が並んで歩く姿がプーさんと相棒のティガーにそっくりだと中国ネットユーザーの話題になり、検閲の対象になった。

2015年に北京で行われた第二次大戦終結70周年の軍事パレードでは、車に乗って中国軍の兵士を検閲する習が車に乗ったプーさんのおもちゃに例えられ、やはり削除された。

確かに政治的に敏感な時期は近付いているが、なぜこのタイミングなのかは不明だった。ただ、その謎を解くカギは最近、世界的に話題になった中国人にあるのかもしれない。

劉暁波が「プーさん」マグカップで妻と乾杯

あるツイッタ―ユーザーは7月18日、「中国がプーさんを禁止したもう1つの理由」という書き込みをした。

写真には、病室にいるとみられるノーベル平和賞受賞者で反体制活動家の劉暁波(リウ・シアオポー)が妻の劉霞(リウ・シア)とマグカップで乾杯している様子が映っている。2人のマグカップにはどちらもプーさんの顔が描かれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中