最新記事

米航空会社

オーバーブッキングのユナイテッド航空機、乗客引きずり出しの一部始終

2017年4月11日(火)17時30分
ジェイソン・ルミエール

最初は抵抗していたが、意識を失ったように引きずり出される男性 Audra D. Bridges/FACEBOOK

<航空会社というのはいざとなれば暴力をふるうことも許される業態だったのか? あまりに理不尽な動画と航空会社の言い分にぞっとせずにはいられない>

米ユナイテッド航空が再びソーシャルメディアで炎上している。シカゴ・オヘア空港からケンタッキー州ルイビルに出発する前の機内で男性の乗客1人が席から引きずり出される様子を撮影した動画が4月9日、フェイスブックに投稿されたため。同社はつい先日も、レギンス搭乗拒否問題で大ひんしゅくを買ったばかり。

【参考記事】レギンスパンツで搭乗は不適切? ユナイテッド航空の「塩対応」が大炎上

この動画は、9日~10日昼前までに8000回近くもシェアされた。空港警察と思しき男性3人が、窓側の席から叫び声を上げる男性を無理やり引っ張り出し、飛行機の前方に向かって通路を引きずっていく。居合わせた乗客によると、引きずり出された男性は医師だという。別の動画を投稿した乗客のツイッターによると、男性は引きずり出される前に意識を失ったようだとコメントしている。驚愕した女性客が叫んでいる。「ひどい。信じられない。なんてことをするの」

ジェイス・アンスバックが投稿した以下の動画は、3万5000回以上共有された。

別の動画では、その男性が約10分後に機内に走り込んできて、取り乱した様子で「家に帰らなくてはならないんだ」と何度も口にしている。

フェイスブックに動画を投稿した女性乗客オードラ・D・ブリッジスが、自宅のあるケンタッキー州ルイビルで地元紙クーリエ・ジャーナルに語ったところによると、問題のフライトはオーバーブッキングになったため、ユナイテッド航空は自発的に別のフライトに変更してくれる乗客を募集し、謝礼として800ドルを提示していた。

ところが誰も名乗り出なかったため、ランダムに4人の乗客が選ばれ、一晩シカゴに宿泊するよう告げられた。4人のうち3人は飛行機を降りたという。ユナイテッド航空の広報担当者マディ・キングによると、飛行機を降りることを拒否した乗客がいた場合、警察に通報するのは標準的な措置だという。

「フライト変更に応じて降りたお客様もいましたが、1人のお客様が再三拒否され、そのせいで出発が遅れてしまいました。めったにないことですが、そういった事態になった時は、次の措置として警察に通報することになっています」

乗客を無理やり降ろすのは標準的な措置なのかと尋ねると、キングは警察に確認して欲しいと答えた。

【参考記事】ナッツリターンの悪夢再び 大韓航空、機内暴力の男に翻弄される

シカゴ警察が4月10日に出した声明によると、その乗客は、引っ張られたときにひじ掛けに倒れ込んで「顔にケガを負った」ものの、命に別条はなく、地元の病院で手当てを受けたという。また、この件について捜査を開始したという。

ユナイテッド航空からは、当初オーバーブッキングに関する謝罪のみが公表された。しかし翌日、オスカー・ムニョスCEO(最高経営責任者)が、改めてこの件について調査すると発表した。

【参考記事】ロイヤル・ヨルダン航空、米の電子機器禁止に神対応

「ユナイテッド航空の全社員は、今回の出来事に大変心を痛めています」とムニョスは述べている。「搭乗機の変更を余儀なくされたお客様に対してお詫び申し上げます」

しかし、悪影響はすでに出ているようだ。ソーシャルメディア上ではユナイテッド航空に対する非難が飛び交い、一部はボイコットを呼びかけている。

ユナイテッドは3月末にも、レギンスを履いた10代の少女2人を搭乗拒否して騒ぎになったばかり。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中