最新記事

ドラッグ

首を吊った元NFLスター、アーロン・ヘルナンデスは精神変容ドラッグ「スパイス」に侵されていた?

2017年4月26日(水)17時48分
グレッグ・プライス

先週自殺した元NFLのスター選手、アーロン・ヘルナンデス Dominick Reuter-REUTERS

人をゾンビのように変えてしまうことからゾンビドラッグとも言われるドラッグ「スパイス」には、他にも「フェイクウィード(ニセ大麻)」、合成大麻、K2など、多くの名がある。その正体は、天然の大麻に似せて化学的に合成されたドラッグだ。危険な作用が、何年も前から報告されている。

先週は、刑務所の独房で首吊り自殺をした全米プロフットボールリーグ(NFL)の元スター選手、アーロン・ヘルナンデス(享年27歳)の遺体から発見された。検視の結果、殺人罪で終身刑に服していたヘルナンデスの腎臓に残った体液からスパイスの痕跡が見つかったのだ。

【参考記事】米ビール業界を襲うマリファナ「快進撃」

スパイスを使うと、さまざまな副作用や症状に長く悩まされるおそれがある。大麻やタバコのように、火をつけてその煙を吸うことで摂取する。スパイスに含まれる有効成分はカンナビノイドで、米国立薬物乱用研究所によると、新種のドラッグである新規向精神薬の一種だという。「精神を変容させる」作用を持つとされる。

スパイスがカラフルな包装で出回り始めたのは2000年代初頭のことだ。CBSニュースが2017年2月に報じたところでは、現在までに、知られている化合物は150種類以上に達するという。全米各州がこれらの物質を違法薬物に指定しているが、法による取り締まりを回避するため、新たな組成の化合物が次々と登場し、今も街中で取引されているのが現状だ。

手紙に染み込ませた可能性も

ヘルナンデスの場合も、本人が何らかの手段を使い、郵便でこのドラッグを入手することは可能だったとみられる。捜査当局からの情報によれば、液体状にしたスパイスを浸した紙を、手紙として送ることも考えられるという。

ヘルナンデスは2015年4月、婚約者の妹の交際相手だったオーデン・ロイドを射殺したとして第1級殺人で有罪となり、収監されていた(他にも2人を殺した容疑で公判中だったが、自殺する前に無罪になったばかりだった)。

ヘルナンデスの悲劇は、スパイスの犠牲になったスター選手の一例にすぎない。ヘルナンデスと同じく元ペイトリオッツのラインバッカー、チャンドラー・ジョーンズも2016年1月、合成大麻による「悪性の薬物反応」により入院した。

【参考記事】セックスとドラッグと、クラシック音楽界の構造的欠陥

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

為替介入「当然考えられる」と片山財務相、無秩序なら

ビジネス

債務残高、対GDP比率引き下げて発散しないようにす

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は予想上回る 25年

ビジネス

AIブームが新リスク、金融業界からは買収の高プレミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中