最新記事

日本政治

情で繋がり、情でつまずく保守の世界~森友学園以外にも繰り返されてきた保守の寄付手法~

2017年3月24日(金)19時20分
古谷経衡(文筆家)

参議院予算委員会の証人喚問に出席した「森友学園」の籠池泰典理事長(3月23日) Issei Kato-REUTERS

<森友学園以外にも、映画『南京の真実』や田母神俊雄の都知事選など、保守派の有名人を広告塔に使って寄付を集める手法は以前からあった。杜撰さや有名人の顔ぶれなど共通点も多い>

森友学園は保守の恥

一連の森友疑惑で慙愧に耐えないのは、「保守」或いは「愛国」を真面目に求道する者たちが、籠池氏のせいであらぬイメージ低下の誹りを受けた事である。国や府を欺罔せんとし、府から刑事告訴を検討され、また香川県在住の私人からすでに刑事告発までなされた籠池氏は、口では「愛国心」「教育勅語による高い道徳の涵養」などと謳うが、その実、あらゆる意味で不誠実極まりないと批判されるのは、読者諸賢の知るところであろう。

このままでは「愛国者」「保守」と名乗れば、すわ籠池氏の姿とシンクロして、おかしな目で見られかねないではないか。「愛国」を汚した罪深さとはこのことである。

当初、森友学園疑惑が勃発した当初、ネットの保守世論は籠池氏に同情的だったが、くだんの「安倍総理から100万円(現在のところ真偽不明)」発言が籠池氏等から飛び出すと、安倍総理と籠池氏を天秤にかけると安倍総理の方が明らかに「重い」ので、ネット世論もたちまち籠池批判へと態度を硬化させる傾向が顕著だ。いわく「森友学園(籠池)は保守の恥」という。普段、ネット保守の論調に辛辣な筆者も、流石にこの感情には満腔の思いで同意する。

繰り返されてきた保守の「寄付手法」

しかし、森友学園の一連の狡猾さは、筆者にある種のデジャブ(既視感)とでもいうべき感情を想起させた。保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める...。大阪府豊中市に建設された「瑞穂の国記念小学院」(取り下げ)は、問題の端緒となった安倍昭恵氏の名誉校長就任をはじめ、数々の保守系言論人・文化人を広告塔として前面に押し出すことによって、4億円(公称)ともいえる寄付金を全国から集めた結果である。

この「寄付手法」とでもういうべき事例は、しかし保守界隈でもう何度も目にしてきた光景なのだ。「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」という今回の森友学園の手法は、この狭い、閉鎖的な「保守ムラ」ともいうべき界隈で、ずっと前から恒常的に繰り返されてきた。そしてそこには、狭く閉鎖的な世界が故の「情」を土台としたムラ的な人間関係が浮かび上がってくる。

「情」で繋がる保守ムラの世界

森友学園の広告塔として無断でパンフレットに写真を掲載されたと主張する作家の竹田恒泰氏は、同学園(塚本幼稚園)で2度講演会を行った際、「ギャラは安かった」などと関西ローカル放送のテレビ番組中に証言した。この言は本当であろう。小学校建設のために自力資金ではなく全国から寄付を集めなければならない法人が、著名な保守系作家とはいえ一回の講演に破格のギャラを出す、とは思えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

27年のCOP32開催国、エチオピアに決定へ=CO

ビジネス

米ボーイング、777X認証試験の次フェーズ開始承認

ワールド

中国、レアアース対米輸出規制緩和で米軍関連企業を除

ビジネス

オリックス、カタール投資庁とPEファンド 投資総額
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中