最新記事

医療

オバマケア廃止・代替案のあからさまな低所得層差別

What You Need to Know About the New Health Care Bill: An Expert's View

2017年3月8日(水)19時13分
ジェシカ・ワプナー

オバマケアの廃止・代替に反対するデモ(3月7日、カリフォルニア州ビスタ) Mike Blake-REUTERS

<延期に延期を重ねてようやく公表されたオバマケアの廃止・代替案。トランプの選挙公約の柱だった。これによってアメリカ人の暮らしやアメリカ社会はどう変わるのか。その驚くべき中身を専門家にわかりやすく解説してもらった>

米下院共和党は火曜、トランプ政権が廃止を公約していたオバマケア(医療保険制度改革=ACA)の廃止・代替案をやっと公表した。所得に応じた補助金の支払いを縮小するなど、多くのアメリカ人に悪影響をもたらす恐れがある。

代替案で導入或いは廃止される具体的な中身について、米ジョンズ・ホプキンズ大学の公衆衛生学大学院のジェラルド・アンダーソン教授に聞いた。

──いま雇用主を通じて医療保険に加入している正社員は、トランプ政権の代替案でどんな影響を受けるのか。

ほとんど影響はない。オバマケアを導入したときも、正社員を対象にした医療保険の仕組みは大して変わらなかった。「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA)」と呼ばれる今回の代替案も、その点では大差ない。オバマケアでは健康な加入者にいくらか特典があった。それが代替案で継続されるかは不透明だが、全体的に見ると影響はないと言える。

──オバマケアの医療保険取引所を通じ、個人で医療保険に加入していた人には、どんな影響があるのか。

重大な影響があるだろう。既存の保険加入者に対する補助金は縮小される。とくに低所得者向けの縮小幅が大きい。私の推計では、代替案で最もひどい打撃を被るのは低所得者だ。現行制度は、所得を基準に補助金を支給している。収入が多ければ多いほど、受け取る補助金が減る仕組みだ。だが代替案は所得ではなく、年齢を基準に補助金の額が決まる。高齢になるほど補助金は増えるが、所得は高くても低くても変わらない。

【参考記事】撤廃寸前のオバマケアに加入者殺到の怪

所得の「逆」再分配

医療保険料は非常に高額だ。多くのアメリカ人は保険料を支払うために多くの補助金を必要とする。貧困層には保険料を支払うお金がないから、無保険のまま置き去りにされる。逆に中高所得層であれば保険料も払える上に、高齢になるほど受け取る補助金も多くなる。

──低所得層に厳しそうだ。

おそらく。法案を読む限りはそうだ。代替案の本質は、一番貧しい層からお金を取り上げて、金持ちに還元するということだ。

【参考記事】アメリカの保守派はどうして「オバマの医療保険改革」に反対するのか?

──このような方針転換を正当化するどんな理屈があるのだろう。

個人の支払能力の違いに関わらず、皆が等しく同じだけの給付を享受すべきという思想がベースだろう。

──オバマケアが支給した補助金と代替案が提案する税額控除とでは、どう違うのか。

オバマケアの補助金の代わりになるのが、代替案が示す税額控除だ。ただしそれぞれの性質は異なる。オバマケアの補助金は保険購入と同時に支給されたため、そのまま保険料に充当することができた。税額控除の場合は確定申告をして還付金を受け取らなければならず、それは保険購入から最長1年以上も先になる。保険加入時には自力で支払うしかない。たとえ1年後に還付金を受け取れるとしても、ほとんどのアメリカ人は、年間5000ドル~1万ドルになる保険料の持ち合わせがない。

【参考記事】貧困層の健康問題から目をそむける日本

ニュース速報

ワールド

北朝鮮ミサイル発射、中国に「大変無礼」=トランプ氏

ワールド

メルケル氏は強力な対米関係確信、相違に正々堂々と意

ワールド

マクロン氏政党、得票率トップに=仏下院選世論調査

ワールド

イタリア秋にも総選挙か、主要政党が改革案支持

MAGAZINE

特集:得する中国、損する日米

2017-6・ 6号(5/30発売)

北朝鮮問題で習近平を「忖度」するトランプ。世界はますます中国のペースに?

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    なぜか再びアメリカで銀行がつぶれ始めた

  • 2

    駐米中国大使とも密通していたクシュナー氏

  • 3

    フィリピンが東南アジアにおけるISISの拠点になる?

  • 4

    内向型人間が自覚すべき、ストレスを感じる10のポイ…

  • 5

    アルツハイマー病による死亡率がアメリカで急増

  • 6

    北朝鮮問題で安倍首相「対話の試みは時間稼ぎに利用…

  • 7

    イギリス自爆テロで犠牲になった人びと 8歳少女や3…

  • 8

    ネガティブになりがちな内向型人間にも、10の強みが…

  • 9

    トランプ政権がルクセンブルク首相のゲイ・ハズバン…

  • 10

    1人の時間が必要な内向型、人と会って元気になる外向型

  • 1

    ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

  • 2

    メラニア夫人が手つなぎ「拒否」、トランプは弱っている?

  • 3

    「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府

  • 4

    アリアナコンサートで容疑者拘束、死者22人で不明者…

  • 5

    北朝鮮危機が招いた米中接近、「台湾化」する日本の…

  • 6

    最凶な露フーリガン対策でロシアが用意した切り札と…

  • 7

    1人の時間が必要な内向型、人と会って元気になる外向型

  • 8

    ドイツが独自の「EU軍」を作り始めた チェコやルー…

  • 9

    ISのテロが5月27日からのラマダーン月に起きるかもし…

  • 10

    キャサリン妃妹ピッパのウェディング、でも主役は花…

  • 1

    ディズニーランド「ファストパス」で待ち時間は短くならない

  • 2

    ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

  • 3

    性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

  • 4

    北朝鮮をかばい続けてきた中国が今、態度を急変させ…

  • 5

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 6

    性科学は1886年に誕生したが、今でもセックスは謎だ…

  • 7

    ニクソンより深刻な罪を犯したトランプは辞任する

  • 8

    「男と女のどちらを好きになるか」は育つ環境で決ま…

  • 9

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 10

    習近平の顔に泥!--北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「外国人から見たニッポンの不思議」
ニューズウィーク試写会「しあわせな人生の選択」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月