最新記事

アメリカ政治

トランプとロシア連携?──FBI長官が「捜査中」と認めた公聴会の闇

2017年3月22日(水)21時30分
ミーケ・エーヤン

■ショーン・スパイサー報道官

オバマに盗聴されたとするトランプの主張をコミーが否定したことを受け、スパイサーはまだ公聴会が続いているうちに短い会見を開いた。オバマ前政権によるトランプタワーの盗聴疑惑については、コミーとロジャースだけでなく、ジェームズ・クラッパー前国家情報長官とGCHQもを否定している。だが、スパイサーはこれまでと同様、それだけではトランプの主張を事実無根と断定するには不十分だと言った。

一方、トランプの選挙活動においてロシアとの共謀があったとする主張については、これ以上調査する必要はないと述べた。スパイサーは、元トランプ選対委員長で、親ロシア派のウクライナ政治家とつながりのあるポール・マナフォートについて、驚くべき論理の飛躍を披露しながら、「(トランプ陣営では)ごく限られた期間に、ごく限られた役割しか担っていなかった」と説明した。この発言には、どの選挙参謀も驚くにちがいない。

セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と接触が明らかになり辞任させられたマイケル・フリンの役割についても実際より小さく扱い、単なるボランティアの1人だったと述べた。一時は国家安全保障担当大統領補佐官に就任したフリンが、政権移行期間から機密性の高い情報を入手できる立場にあったことを無視した発言だ。

■デビス・ヌネス下院情報委員会委員長(共和党)

下院情報委員会のデビン・ヌネス委員長(共和党)はオバマ前政権を批判した。公聴会の冒頭で、ロシア政府をひどく見くびっていたと糾弾したのだ。ヌネスはロシアの増長を許した民主党をやり玉にあげることで、共和党の伝統的な対ロシア強硬路線を放棄したトランプ政権に対する批判をかわしたのだ。

ヌネスは基本的に共和党のチーム・プレイヤーなので、トランプの疑惑について公平な調査を指揮できるはずがない。部下にあたる情報機関の職員に対して安心感を与えてくれる発言もほとんどなかった。

■トレイ・ゴウディ元下院ベンガジ特別委員会委員長

下院ベンガジ特別委員会の委員長を務めたトレイ・ゴウディは、フリンとロシアのキスリャクの会話がリークされたことに関して、コミーを執拗に追及した。ゴウディはこの点を懸念するあまりに、リーク元を突き止めてその「穴」を塞がなければ、外国情報監視法(FISA)702条にもとづく捜査網が危機に瀕するおそれがあるとまで主張した。

CIA職員4名が犠牲になったリビアのベンガジ事件をめぐっては、リークにまみれた調査が何カ月も行われたが、その時ゴウディがリークに対して同レベルの懸念を示したなら、今回の懸念にも一定の説得力はあっただろう。

■ジェームズ・コミーFBI長官

コミーは捜査内容に関する委員の質問に対し、たびたび回答を拒んだ。だが、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントンのメール問題に関しては、新たな証拠が見つかって捜査を再開することを、大統領選の11日前に、今回と同じ議員たちに通知している。この暴露により世論はトランプ有利に大きく傾いたが、結局、実質的な証拠は何も見つからなかった。驚いたことに、この扱いの差をコミーに質した委員は1人もいなかった。

【参考記事】クリントンよりトランプの肩を持ったFBI長官
【参考記事】メール問題、FBIはクリントンの足を引っ張ったのか?


From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中