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中朝関係

金正男氏の息子、キム・ハンソル氏と中国の動向――中国政府関係者を取材

2017年2月27日(月)13時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

このような状況の中、もしハンソル氏が身元確認のためにマレーシアに行き、DNA鑑定などで、「殺害された」のが間違いなく父親・金正男氏であると認定するようなことになれば、中国は北朝鮮の主張を否定する行動を阻止しなかったことになる。

つまり、北朝鮮の主張を否定する行動に「賛同」した(少なくとも許可した)ことになるわけだ。

となれば、中朝関係の悪化は避けられなくなるだろう。

2月16日の取材の時には、「金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材」に書いたように、中国政府関係者は「(今般の金正男殺害事件はマレーシアで起きているので)中朝関係にはあまり大きな変化はない」と回答している。しかし北朝鮮が「金正男ではない」と主張し始めてからは、事態は変わったはずだ。

これに関して、中国政府としてはどういう態度を取るのか、同じ中国政府関係者を取材した。

なお、日本のメディアでは、「マレーシア警察がICPO(国際刑事警察機構)の協力を得て、マカオでハンソル氏に面会し、DNAサンプルの提供を受けるようだ。23日にも3人の警察官がマカオに向かうとも伝えられている」という報道は流れているが、それを否定したマレーシア警察の報道はあまりなされていない。それに対して中国では「マレーシア警察:マカオに人を派遣して金正男の息子のDNAサンプルを採取することなど、あり得ない」という情報が数多く流れている。

これらを踏まえた上で取材した。以下は、その取材の問答である。

中国政府関係者との問答

質問:北朝鮮が、マレーシアで死亡した朝鮮籍男性は金正男ではないと主張し始めているので、前回の取材の時のように、「中朝関係に大きな変化はない」という情況とは違ってきたのではないか。

回答:その通りだ。あのときは、事件が起きた場所が中国ではなくマレーシアなので、中朝関係に大きな変化はないと言った。しかし、北朝鮮が「死亡したのは金正男ではない」と主張し始めたので、中国にとっては、やっかいなことになった。

質問:それはつまり、「金正男であるか否か」をチェックするために、肉親のDNAが必要になるから、ということか。

回答:その通りだ。中国としては、どちらの側にも立ちたくないし、巻き込まれたくはない。

質問:ハンソル氏は、いまマカオにいると考えていいか?

回答:そのような質問に答えるはずがないだろう。

質問:では、仮に北京であれ、マカオであれ、少なくともハンソル氏が中国の国土上にいるとすれば、警護を強化するか?

回答:それは当然だ。強化する。

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