最新記事

ウクライナ

ウクライナ戦闘激化で試されるトランプ──NATOもEUも捨ててロシアにつくのか?

2017年2月2日(木)21時00分
ポール・マクリーリー

戦闘激化で焼け出されたウクライナ東部アフデエフカの人々。凍った魚の配給を受けている Gleb Garanich-REUTERS

<ウクライナ東部で2年半ぶりに戦闘が激化している。トランプ政権を試すために、ロシアが親ロシア派を煽っている可能性もある。アメリカが見放せば、親欧派の政権はもたない。NATOやEUは今、トランプの出方に警戒を強めている>

ウクライナ東部で週明けから親ロシア派とウクライナ政府軍の戦闘が激化している。2014年9月のミンスク合意による停戦で「凍結された紛争」が再燃し、ドナルド・トランプ米大統領率いる新政権のロシアに対する戦略と力量が初めて本格的に試されている。

ロシアの支援を受けた親ロ派が1月29日の日曜日、ウクライナ政府軍が支配するドネツク州の工業都市アフデエフカに攻勢をかけ、周辺地域で一気に衝突がエスカレートした。政府軍の兵士十数人が死亡した模様だ。前日の土曜には、トランプが大統領就任後初めてロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行ったばかりだった。

【参考記事】トランプはなぜプーチンを称賛するのか

欧州安保協力機構(OSCE)の停戦監視団によると、日曜だけで少なくとも2300発の砲弾、迫撃砲、ロケット弾による攻撃が行われた。停戦合意後も前線では日常的に小競り合いが続いていたが、これほどの規模の交戦は異例だという。

警戒強めるウクライナとNATO

一方、ウクライナ政府軍も親ロ派支配地域との境界に設置された中立地帯に侵攻中とみられる。ウクライナ政府はこれまでより弱い立場で再び交渉のテーブルに就くことを見越して、わずかでも支配地域を広げようとしているようだ。

ロシア寄りのトランプがプーチンと電話会談を行ったことで、ウクライナ政府とNATOは警戒感を強めている。アメリカがウクライナ政府へのテコ入れを控え、ウクライナ問題の解決をプーチンに任せる可能性があるからだ。

【参考記事】トランプ、NATO東欧の防衛義務を軽視

匿名を条件に取材に応じた米国防総省の高官によれば、トランプ政権下でロシアが「どこまでやれるか」試すために、新政権発足後ロシアがウクライナへの介入を強めることは国防総省内ではかなり以前から予想されていたらしい。

戦闘の激化に加え、水曜にはウクライナの輸送機がロシア軍の対空射撃を受けたという報道があった。こうした情勢から「ロシアは平和的な姿勢を見せる気はない」と、昨年末までNATO事務次長を務めていたアレクザンダー・バーシュボーはみる。

「トランプ政権がウクライナ政府と距離を置き、(ウクライナの大統領)ペトロ・ポロシェンコに自力でロシアと交渉しろと言うかどうか試す気だ」と、バーシュボーはロシアの意図を解説する。アメリカに見放されれば、「もちろんポロシェンコ政権はつぶされるだろう」

【参考記事】ウクライナ危機で問われるNATOの意味

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて

ワールド

米国民、「大統領と王の違い」理解する必要=最高裁リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中