最新記事

米ロ関係

トランプ&プーチンの蜜月、米議会圧力で破局か

2017年1月12日(木)11時00分

1月9日、ドナルド・トランプ次期大統領は対ロ関係を改善したいという希望がある一方、ロシアによる米大統領選介入問題を受け、同国に対してさらに厳しい対応を求める党内の圧力にさらされているいる。写真は2016年11月、モンテネグロに掲げられたトランプ氏とロシアのプーチン大統領の看板(2017年 ロイター/Stevo Vasiljevic)

 ドナルド・トランプ次期大統領は板挟みの状況に置かれている。対ロ関係を改善したいという希望がある一方で、ロシア政府による米大統領選への介入を米情報当局が指摘したことで、同国に対してより厳しい対応を求める共和党内からの圧力に直面しているためだ。

 トランプ次期政権で首席補佐官に就任するラインス・プリーバス氏が8日、民主党組織に対するハッキング行為の裏にロシアの存在があることを暗に認めたことが示すように、トランプ氏にとっては駆け引きの余地が少なくなっている可能性がある。

 ロシアが大統領選期間中のハッキングに関与している(ロシア側は否認)、あるいは11月の本選挙におけるトランプ氏の勝利を支援しようとしていたという情報当局の結論に対し、トランプ氏はこれまでずっと否定的であり、システムへの侵入は中国か「ベッドに座った400ポンド(約180キロ)のハッカー」の仕業だろうと発言してきた。

 だが先週、米国の情報機関がこの件でロシアのプーチン大統領を批判したことを受けて、1月20日の大統領就任後、トランプ氏は軍事、外交、経済、そして恐らく諜報の分野で、ロシアに対する厳しい対応を求める声に直面するだろうとロシア問題の専門家は指摘する。

 トランプ氏の政権移行チームにも影響力を持つ保守系シンクタンクのヘリテッジ財団のナイル・ガーディナー氏は、「米新政権はかなり厳しい方針を採る必要があるだろう」と語る。

 トランプ氏が進めるロシアとの関係改善の動きを憂慮する共和党議員らが、プーチン大統領が何よりも望んでいる成果を与えないよう、新大統領に圧力をかける可能性がある、と専門家は指摘する。それは2014年のクリミア地方併合とウクライナ東部の分離独立主義者に対する支援をめぐりロシアに科した経済制裁を早期軽減することだ。

 米情報機関によれば、大統領選以降、ロシアのスパイによるハッキングの標的は、民主党以外の個人や著名シンクタンクを含む組織に移っており、アナリストは、これは今後の米国政策を把握しようという試みであると考えている。

 著名ロシア問題専門家ストローブ・タルボット氏が率いるブルッキングス研究所には、「大統領選の翌日、大量のサイバー攻撃が仕掛けられた」ものの、システムに問題が生じたという兆候はない、と同研究所の広報担当バイスプレジデント、デビッド・ナッサー氏は語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年はボラティリティー高く利益上げるチャンス、資産

ビジネス

航空業界、機体確保に障害でも来年過去最高益 IAT

ワールド

米・メキシコ、水問題巡り9日にオンライン会談へ

ワールド

EU加盟国、40年までの温室効果ガス排出90%削減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 9
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中