最新記事

中台関係

「習近平・洪秀柱」国共党首会談――親中・国民党に逆効果

2016年11月4日(金)08時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 習近平総書記は党首会談で、洪秀柱主席に対して、つぎのように述べた。

「一つの中国の原則のもとで、正式に両岸の敵対関係を終わらせ和平協議を達成すべく協議することは、われわれの一貫した主張でもある。国共両党は、これからこの問題に関して討議を進めてもいい

 それはあたかも、「和平協議を法律的に有効化させたいのなら、政権与党になれ」と言っているように筆者の目には映った。なぜなら「ぜひとも討議を進めたい」とは言わずに「可以進行探討(討議を進めてもいい)」という言葉を使ったからだ。そして何よりも、習近平の顔には、「熱意」がなかったからでもある。

台湾の民意に逆行する洪秀柱主席の動き

 一方、台湾では、洪秀柱主席の動き方に大きな反発が起きている。

 10月30日の「台湾中央社」の報道によれば、洪秀柱氏が大陸に向かうべく飛行場に着くと、そこには大勢の反対派がいて「洪秀柱は共産党に媚びへつらい、台湾を売り渡している」とか「今日は香港、明日は台湾」などといったプラカードを掲げて、洪秀柱氏の過度の中共へのすり寄りを批難したとのこと。もちろん賛成派もいて衝突が起きたようだ。

 また多くの中文メディアが「(国民党を建党した)孫文や最後まで中国共産党と戦った蒋介石が、こんにちの国民党のこの "ていたらく" を見たら、どんなに嘆くことだろう」「国民党は良心と気概と尊厳を捨てたのだ」と書いている。

 筆者が直接、台湾の大学生たちに電話取材をして得た意見によれば、若者の間ではほとんど(「90%ほどかな」と学生たちは言った)が洪秀柱氏の「和平協議」を「台湾への侮辱」とみなしているという。

「国民党はすでに自尊心を捨ててしまっているのです。これは台湾人の尊厳に関わる問題で、どんなことがあっても、国民党に政権を取らせてはならないと、若者たちは思っています。僕らは、尊厳のために闘ってきたというのに......」という回答もあった。

 筆者は2014年に台湾の大学生に対する意識調査を単独に行なったことがあるが、それによれば「最も嫌いな国あるいは地域」のトップは「大陸(=中国)」で、理由は「恐怖政治による言論統一」だった。

 このたびの「和平協議」に関しても、意識調査をした時のインタビュー・アンケートに応じてくれたネットワークを使って聞いたところ「この和平とは、恐怖政治の下での和平なのです」と回答する者が多かった。

民意調査のデータ

 一般の民意調査は、どの団体が行なったか、あるいはどういう質問を設定したかなどによって結果が違ってくる。それを認識した上でいくつかの例を見てみよう。

 まず1989年の天安門事件の指導者の一人であったウアルカイシ氏などが主宰する「台湾民意基金会」が9月27日に発表した民意調査の結果によれば、「67.4%が中国共産党に反感」を抱いており、「19.3%が中国共産党を礼賛」している。また「56%が台湾は将来的には独立した方がいい」と考えているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次年度国債発行、30年債の優先減額求める声=財務省

ビジネス

韓国ネイバー傘下企業、国内最大の仮想通貨取引所を買

ワールド

中国、与那国島ミサイル計画に警告 「台湾で一線越え

ビジネス

JPモルガン、カナリーワーフに巨大な英本社ビル新設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中