最新記事

ベネズエラ

「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情

2016年6月20日(月)12時28分
野田 香奈子

 政府の言い訳のひとつに、「我々の輸入が増えている理由は、人口が増えているからだ」というものがあるが、それを裏付けるような数字はない。チャート3とチャート4で示されているように、1人当たりの数字は同じことを示している。

chart-3-imports-by-value-per-capita.jpg

チャート3 - 1人当たりの輸入額

chart-4-imports-by-volume-per-capita.jpg

チャート4 - 1人当たりの輸入量


 人口増加率の説明では、輸入額の20%の増加しか説明できず、また輸入量では27%の増加しか説明できない。ちょうど先に述べたのと同様に、2008年が大きな転換点となっている。1人当たりの食料輸入は、2008年から2014年の間で平均で1人当たり283ドルまで増加しているが、これは、それ以前に比べて239%の増加だ。輸入量でいうと、54.5%、289kgまで増加した。

 輸入依存と食料不足に対する政府の別の答えには、(革命のおかげで)現在ベネズエラ人は以前に比べ食べる量が増えた、というものがある。でも、政府の出した数字自体がそのことを否定しているって知ってた?

 チャート5で示されているのは、2014年の前半までの、ベネズエラ人が消費する主要食品上位7項目に関する国家統計院(INE)の報告で、1人が1日当たりに消費するグラム数だ。これらの主要食品すべてが輸入に頼っており、中でもパスタやパンなどは、ベネズエラで小麦粉が生産されていないことから、その大部分が輸入されている。

chart-5-food-consumption.jpg

チャート5 - INEによる食料消費


 ベネズエラ人が自分たちの好きな食べ物をチャベス政権の下でより多く食べるようになっているとしても、それはデータには現れていない。2003年から2011年前半までは、主要食品4品は増加し3品が減少しており、全体的な変化は不明瞭だ。だが、2011年後半以降は、どの主要食品の消費でも明らかに減少傾向が見られる。ここ3年間で、人々が食べる量は以前より平均で20%減っている。

 2003年から2011年に消費が増えたどの品目も、2014年までに元に戻ったどころではない。2003年に比べ2014年の消費量が多いのは、鶏肉だけである。11年間にわたるチャベス主義を経て、人々がこれら主要食品を食べる量は16.5%も減少する羽目になった。2004年以降、状況が改善したと信じられる根拠は皆無だ。食料不足はただただ悪化している。

 食料輸入の増加の原因は、人口が増えたからでも、栄養状態が良くなったからでもない。部分的には、国内生産の減少による食料不足を穴埋めするため政府が輸入を促進し、実行した結果なのだが、これはまた、過大評価された公式ドルレートのせいで食料の輸入が(あるいは、ドルを入手する方法として、ただ食料を輸入しているように見せかけることが)並外れた利益を生むものになったからだ。

 政府は、従来国内生産者によって供給されていた食料の輸入を、公共部門において大幅に拡大している。政府は、ベネズエラ国内で生産するのに比べ何倍も高い価格で外国から食料を購入し、これを、損失を出しながら、生産コストを大幅に下回る価格で販売している。事実上、これは自らに課したダンピングなのだ。国際貿易の規則の下では、貿易におけるダンピングはあまりに破壊的なため現に違法とされているが、これはベネズエラには当てはまらない。というのも、ベネズエラが行っているのは、自国が対象のダンピングだからだ。

 これでは国内生産が崩壊するのも当然だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、空軍の核戦争抑止力を強調 式典で

ビジネス

中国製造業PMI、11月は8カ月連続50割れ 非製

ワールド

米・ウクライナ、30日にフロリダで会談 和平案協議

ワールド

香港火災、犠牲者追悼の動き広がる 150人依然不明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中