最新記事

テクノロジー

「次のインターネット」、噂のブロックチェーンって何?

2016年6月20日(月)16時00分
ケビン・メイニー

Gary Waters-Ikon Images/GETTY IMAGES

<仮想通貨ビットコインの根幹にある取引システム・ブロックチェーンは、未来のビジネス取引を変える「次のインターネット」になれるのか>

 ブロックチェーンをご存じですか? 今はまあ、知らなくて当然。インターネットだって、1993年当時はひと握りの人しか知らなかった。でもその後10年ほどで、私たちの生活に欠かせない存在になった。

 ブロックチェーンは仮想通貨ビットコインの根幹にある技術。世界中のコンピューターですべての取引記録を共有し、データの改ざんを困難にする仕組みだ。一定の取引データの塊(ブロック)をチェーンのようにつないでいくのでこう呼ばれる。

 単独の管理者はいない。インターネットが複数の将軍(グーグルやアマゾン)の率いる軍隊だとすれば、ブロックチェーンは働きアリの集団のような世界だ。みんなが平等に役割を分担し、黙々と働いている。

【参考記事】ビットコインをめぐる5つの誤解を解く

 93年は、インターネットよりも「情報スーパーハイウエー」が語られていた時代で、ヤフーという会社ができる2年前。フェイスブックの登場は誰も予想しておらず、後に創業者となるマーク・ザッカーバーグはまだ9歳だった。

 しかしインターネットはその後の10年ほどで急成長し、急激に普及し、世の中を変えた。80年代からテクノロジーの進化を観察し、多くの企業にアドバイスをしてきたドン・タプスコットに言わせれば、ブロックチェーンは「次のインターネット」になる可能性がある。

 そう考えるのは彼だけではない。今年第1四半期には複数のベンチャーキャピタルが、ブロックチェーン関連の新興企業に1億6000万ドルを投じた(前四半期は2600万ドル)。「ブロックチェーン」という単語のグーグル検索数は32%も増えた。

 ブロックチェーンは、ネットワーク上にあるデジタル情報の「本物」が勝手に複製されないことを保証する史上初のシステムだ。その技術が最初に通貨に応用された理由もここにある。1人の人間が誰かに通貨を渡す(支払う)際に、その通貨のコピーを手元に残せる(通貨が減らない)ようでは困るからだ。

個人の直接取引が盛んに

 ブロックチェーンがさらに発展していけば、今は会計士や銀行、弁護士や政府に頼っている信用や保証を自動化するシステムが実現するだろう。ブロックチェーン上にあるもの(通貨、証書や人物情報)は何でも「本物」と認識でき、世界中のすべての人がその価値に同意したことになるからだ。

 それだけではない。ブロックチェーン上の情報はすべてデジタルだから、プログラム化することが可能だ。

 通貨に一定のプログラムを組み込めば、それを誰が使用したかの履歴を完璧に追跡できる。ソフトウエア化された契約書なら、仕事の進捗状況を知ることができ、支払いも銀行を通さずにできる。音楽配信に応用すれば、iTunesのような仲介サイトを省いて、アーティストに利用料金を直接送金できるようになるだろう。

 既にブロックチェーンを応用した企業が登場しつつある。例えばエバーレジャー社は、ブロックチェーン上でダイヤモンドの取引を管理している。

 センサーで個々のダイヤの形状を厳密に測定し、そのデジタル指紋を登録する仕組みだ。ブロックチェーン上にはそのダイヤの取引履歴が記録され、購入希望者は事前に来歴を追跡することができ、いわゆる「ブラッド・ダイヤモンド」や盗品の購入を回避できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国新疆から撤退を、米労働省高官が企業に呼びかけ 

ビジネス

米8紙、オープンAIとマイクロソフト提訴 著作権侵

ビジネス

米研究開発関連控除、国際課税ルールの適用外求め協議

ビジネス

AI用サーバーの米スーパー・マイクロ、四半期売上高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 6

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 7

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中