最新記事

東シナ海

尖閣接続水域進入は中露連携なのか?――中国政府関係者を直撃取材

2016年6月13日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 ●現に中露両国は5月28日から"空天安全-2016"シミュレーション演習を行なっている(国防部網情報)。中露の利害が一致しないはずがないし、中露が緊密に連携を取ってないはずがないということだ。

 ●でも、日本は北方領土問題があるから、ロシアの恨みを買うようなことをしたくはないのだろう。だから「中露連携」があったとは認めたくない。中国メディアの報道の意味は、そういうことだ。

 以上が取材した結果、中国政府関係者から得た回答である。

 たしかに3月10日、全人代開催中だというのに、記者会見を終えた王毅外相は、突然姿を消したことがある。その裏には、このような戦略が隠されていたとは......。

 しかし軍事演習関係なら、なぜ外相が行って国防部長(大臣)が行かなかったのだろうか。それを含めた(カモフラージュのための)戦略なのかを聞いてみた。「露骨に分かるようなことはしない」という答えがが戻ってきた。そうだったのか......。筆者にも読み切れなかった。

 それにしても、日本側が「中露は連携していただろう!」と厳しく詰問して、中国が「いや、そんなことはしていない」とか「そのようなことを明かす義務はない」といった否定的態度に出るのなら話は分かるが、今回は全く逆で「さあ、疑えよ」と言わんばかりだ。要するに、「いざとなったら中露が連携するぞ」という新たな威嚇なのかもしれない。

 少なくとも、背景にある経緯はわかった。そういった要素も頭に入れながら、今後はどのような動きに出るのか、慎重に見極めていきたい。

追記)以上はあくまでも中国政府関係者が「私個人の意見だが」という条件を付けて話したものであり、おまけに「中露連携があった」と断言す る言葉は最後まで避けた。したがって「当たらずとも遠からず」といったところか。またロシア外務省は連携を否定しているが、いずれの国も「いくつもの顔」 を持っているのが外交の世界。ロシアとしては日本に嫌われたくはなく、日露首脳の交流を通して、アメリカにより孤立化させられている現状から逃れるために も、親日的姿勢を一方では模索しているものと考えられる。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン、南シナ海で警備強化へ 中国の人工島建設

ワールド

リオ・ティント、無人運転の鉄鉱石列車が衝突・脱線 

ビジネス

ソフトバンクGの1―3月期純利益2310億円、2四

ワールド

アングル:ドイツで政治家標的の暴行事件急増、背景に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中