最新記事

人工葉

人工の葉っぱとバクテリアで、太陽光から液体燃料を生み出す技術

2016年6月4日(土)11時01分
山路達也

Alexander Raths-iStocks

<ハーバード大学の研究チームは、人工葉とバクテリアを組み合わせて、太陽光からアルコール燃料を生成することに成功した>

 太陽光と二酸化炭素、水から炭水化物を生み出す------。葉緑素を持つ植物が行っている光合成を人工的に再現する「人工光合成」は、エネルギー問題の解決策になるとして大いに注目を集めている。

 ハーバード大学のDaniel Nocera教授が発表して話題を呼んでいるのは、人工葉とバクテリアを組み合わせた方法だ。

 人工葉には特殊な光触媒が使われており、太陽光を当てることで水を水素と酸素に分解する。ラルストニア・ユートロファというバクテリアが水素と二酸化炭素と結合させ、アルコール燃料を合成するという仕組みだ。

2016leaf.jpg

 この研究を実用化するのは難しいと言われていたが、Nocera教授はラルストニア・ユートロファの遺伝子を操作することで、変換効率6.4%でアルコール燃料を生成することに成功した。

 バクテリアで満たされた1リットルの反応装置は、空気中の二酸化炭素を1日あたり500リットルを吸収。1キロワット時のエネルギーを生成すると、空気中から237リットルの二酸化炭素を除去できるという(ただし、生成されたアルコール燃料を燃焼させると、二酸化炭素が空気中に放出されるので、温暖化問題の解決になるわけではないとのこと)。

 既存の発電システムに比べてエネルギー効率が高いわけではないが、ポイントはアルコールという形でエネルギーを貯蔵できることだろう。人工葉は太陽光さえあれば、汚水や尿などからも水素を取り出すことができる。Nocera教授は、発送電インフラの整っていないインドで、この人工光合成システムを展開したいと考えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    中国の大豆ボイコットでトランプ関税大幅に譲歩、戦…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中