最新記事

交通

自動運転車の実用化はシンガポールにお任せ

小さな島国が米日独を押しのけて世界初の商用自動運転を実現できそうな理由

2016年4月25日(月)16時30分
パトリック・ウィン

世界の実験場 植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」で行われた試験走行 Edgar Su-REUTERS

 東南アジアの小さな島国シンガポール。ここの人々はテクノロジーが大好きだ。同時にこの豊かな都市国家は、強権的な政府が厳しいルールを住民に強制できる国でもある。

 自動運転車の開発と普及にとって、これほど好条件に恵まれた場所は世界中にほとんどない。実用化を目指す競争でアメリカを出し抜く可能性もある。

 近い将来、自動運転が人々の暮らしを一変させることはほぼ間違いない。問題はそれがいつかだ。日産自動車やゼネラル・モーターズ(GM)など大手メーカー7社は、20年までに自動運転車を発売すると発表している。全米都市連盟の調査によれば、30年までに自動運転車は「日常的な」風景になるという。 

 自動運転の研究で世界のトップを走るのは、米カリフォルニア州のシリコンバレーだ。グーグルは既に公道で約150万マイル(約240万キロ)の走行実験を実施。ただし、カリフォルニアで自動運転車による通勤が今すぐ実現するわけではない。

【参考記事】「発進」ボタンを押すだけ、グーグルの完全自動運転車
【参考記事】自動運転でも手を離せないテスラの大いなる矛盾

 シンガポールはアメリカの技術を拝借して、競争に勝つつもりらしい。政府は研究補助金と法制度を味方にアメリカ人科学者を引き付けようとしている。

「私たちはシンガポールに懸けている」と言うのは、自動運転車のソフトウエア開発を行うヌートノミーのダグ・パーカーCOO(最高執行責任者)。同社はマサチューセッツ工科大学(MIT)のプロジェクトから誕生した新興企業だが、オフィスをシンガポールに置いている。パーカーによれば、「自動運転車を大規模に採用する最初の国」になると確信したからだ。

政府主導ならではの強み

 ヌートノミーは今後1~2年以内に、公共交通向けのロボット運転車を完成させたいと考えている。もし実現すれば、世界初の商用自動運転車になりそうだ。「シンガポールは経済強国だが、同時に小さな国でもある」と、パーカーは言う。「彼らは対応が早い。アメリカ政府が法制化するのは難しいことも、彼らならできる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中