最新記事

言論統制

公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?――中国のコラムニスト

2016年3月22日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 しかし、たとえば北京の有線テレビとかホテルのテレビなどで、日本のテレビの「中国政府に不利な有害情報」が出た瞬間に、テレビの画面がブラック・アウトするくらいのハイレベルの技術を中宣部は持っている。その時間は1秒よりも短い。テレビもネットも、すべて中宣部の管轄下にある。ましてや中国政府の通信社「新華社」のウェブサイトに、このような誤字が出てくることは、非常に考えにくい。

 賈葭氏が今般の公開状に関わっていたのか否かは別として、第二、第三の賈葭氏に相当したような人物が、新華社内部にもいたという可能性は否定できない。

賈葭氏は、かつて、香港の報道機関にもいた

 賈葭氏は実は、香港の『陽光時務週刊』の副編集長をしていた時期があり、また香港のリベラルなメディアである『端傳媒』(傳媒はメディアの意味)の評論部門の編集長をしていた時期もある。

 筆者は1月末、まさにこの『端傳媒』の総編集長である張潔平氏から取材を受けたばかりだ。

 彼女はイギリスのBBC中文網が筆者の書いた『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関して報道しているのを見て、どうしても筆者を取材したいと言ってきた。

「香港は一国二制度とはいっても、中国の管轄下にあるから、こんなものを載せても大丈夫なの?」と筆者が聞くと、「大丈夫よ。私たちはいつでもリベラルな報道をしているわ。多少は大陸の当局から睨まれてはいるけど、でも平気!」と張潔平氏はそのとき笑っていたのだが、なぜか、連絡が途絶えた。

 やはり、まずいのだろうなぁと思っていたところ、賈葭氏の拘束を知ったのである。

 香港メディアによると、張潔平氏はつい最近、香港の大学で講演し、「最近は大陸の当局の監視が非常に厳しくなっている」と述べたとのことだ。

 賈葭氏も実は3月17日に香港で「香港は誰のものか?」というスピーチをすることになっていたという。

共通しているのは、国と党を思う「真の愛」と「良心」

 2月29日付けのコラム<中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!>で、中国共産党員の任志強氏が「自分こそは忠誠なる共産党員だ」として習近平政権あるいは現在の共産党政権を批判する発信を盛んにしていたことを書いた。彼のアカウントは強制的に閉鎖されてしまったのだが、「習近平よ、辞職せよ」という趣旨の公開状にも、冒頭に「私たちは忠誠なる共産党員として習近平に忠告する」という旨のことが書いてある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して

ワールド

米民間セクター代表団、グリーンランドを今週訪問 投

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中