最新記事

中東

少女「テロリスト」を蜂の巣にする狂気のイスラエル

彼らはなぜパレスチナ人をここまで嫌い、排除しようとするのか

2016年2月15日(月)17時00分
ハニーン・ゾアビ(イスラエルのアラブ系国会議員)

憎しみの連鎖 イスラエル人2人を死傷させて射殺されたパレスチナ人の葬儀 Mohamad Torokman-REUTERS

 15歳のその少女は何発も弾を受け、血を流しながらエルサレムの歩道に横たわっていた。男が歩み寄って頭を一発撃ち、少女は絶命した。また「英雄」が「テロリスト」を始末したのだ。あるいは、ここでは見慣れた超法規的な処刑だろうか?

 言葉さえ変わった。昨今のメディアは、殺人のことを「無力化」と表現する。

 我々はもう、このような恐ろしい悲劇を見ていられない。血塗られた制服、教科書が詰まった鞄、歩道一面に舞うノートの切れ端。そして小さなはさみ。少女が年配の男を刺そうとした時に使ったものだ。占領者イスラエルに対する復讐の刃。

【参考記事】「名前はまだない」パレスチナの蜂起

【参考記事】インティファーダを警戒、イスラエル市民に「銃携帯命令」

 これがイスラエル占領地の日常だ。夜襲、抑圧と屈辱、差別的な壁、住居の取り壊し、イスラエル人専用の道路、バリケード、教会やモスクの焼き討ち。イスラエル人入植者や警察による銃乱射。灰色で、希望のない毎日。

 だからといって、占領地での死を正当化するつもりはない。この少女のような子供たちは政治運動の一部ではなく、うまく行き過ぎた抑圧の申し子だ。この子供たちは、彼らの犠牲者と同様の犠牲者なのだ。

遺体を返還しないという罰

 エルサレム警察は、過去数カ月の間に「テロ行為」で殺されたパレスチナ人たちの遺体を返還していない。遺族に対する罰の一つだ。現在、10人の遺体が警察の手元に留め置かれている。

 イスラエルの3人のクネセト(国会)議員、ジャマル・ザハルカ、バサル・ガタス、そして筆者は先週、遺体の遺族と弁護士たちと会い、かねてから連絡を取っていた国家安全保障相に遺体の返還を求める手紙を渡した。

【参考記事】イスラエル総選挙でアラブ系統一会派が歴史的躍進

 だがネタニヤフ首相は我々の行動を反体制運動の先駆けと見た。我々は裏切り者かそれよりひどいレッテルを貼られた。イスラエルの民主主義は多数派の統治を意味し、人権や少数者の権利は無視している。多数派による専制の危険が常につきまとっているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英CPI、10月3.6%に鈍化 12月利下げ観測

ビジネス

インドネシア中銀、2会合連続金利据え置き ルピア安

ワールド

政府・日銀、高い緊張感もち「市場注視」 丁寧な対話

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中