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中台関係

だから台湾人は中国人と間違えられたくない

中国政府に「同胞」とみなされるからこそ、台湾人は冷遇され、逮捕・監禁や会社乗っ取りの憂き目に遭ってきた

2016年2月9日(火)16時25分
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

台湾と中国 中国政府の脅威に対する反発から、台湾では若い世代を中心に「台湾人」意識が高まりつつある(2014年、学生たちが中台のサービス貿易協定発効に反対して起こした「ひまわり学生運動」で、立法院内で椅子を積み上げてバリケードを築く若者) Pichi Chuang-REUTERS

 旧正月(春節)が始まった。中国人の"民族大移動"は例年通りだが、実際に日本へ押し寄せる中国人観光客が「爆買い」する姿を目にすると、やはりその熱気に圧倒される。

 しばらく前の話になるが、来日した「台湾人」観光客が、日本では中国人と間違えられないよう、無言で静かに観光しているというニュースを見た。同じ中華民族とはいえ、教養とマナーを重んじる台湾の人々が、傍若無人なふるまいや大声で話す大陸育ちの中国人と一線を画したいと願う気持ちが伝わってきて、心が痛んだ。

【参考記事】銀座定点観測7年目、ミスマッチが目立つ今年の「爆買い」商戦

 だが、台湾の人々が無言を決め込む相手は、一部のマナー知らずの中国人だけではないだろう。彼らの背景に透かして見える、もっと横暴な中国の国家体質をつい連想してしまうからではないだろうか。

 日本では報道される機会は少ないが、実は、中国ビジネスに携わる台湾の企業家たちが中国で理不尽な扱いを受けたり、会社を乗っ取られたりするケースが頻発している。

 カナダの中国語ケーブルテレビ局「新唐人」(2015年7月3日放送)によれば、中国の湖南省でビジネスを展開して15年になる台湾の企業家が、脱税容疑で逮捕されて取り調べもないまま、現在も中国で軟禁されているという。企業家の妻は、「中国の株主がコネを利用して衡陽県公安局に通報し、会社の帳簿を渡しました。そのあと私服警官がやって来て、逮捕状もなく夫を連行しました」と涙ながらに訴える。

 トラブルの発端は、合弁のパートナーである中国企業が、台湾の企業家が所有する6割の株を奪おうとしたことだった。企業家は4月に台湾に戻って、台湾政府の対中交渉の窓口機関である「海峡交流基金会」に訴えた。すると間もなく中国側パートナーが話し合いを申し入れてきたため、中国へ行くと、複数の警官が会社にやって来て連行された。37日間勾留された末にようやく証拠不十分で釈放されたが、今も中国側パートナーが牛耳る工場に軟禁されたままだという。「海峡交流基金会」が中国政府に抗議したが、返答はないままだ。

 こんな事例もある。14年前から四川省綿陽市の経済技術開発区に工場を開設し、総額5億台湾ドル(約19億円)を投じて順調に経営していた台湾の企業家が、2013年に突然、市当局から合弁契約の無効を宣言された。現地の司法機関に訴えたが認められず、国外退去になったという(同、2015年2月10日放送)。

政府と警察、合弁パートナーが結託して逮捕・拘禁

 こうしたトラブルは、絶え間なく発生してきた。

 振り返れば、1979年、当時の最高実力者・鄧小平が「経済改革・開放政策」を打ち出して以来、中国は世界各国へ向けて対中投資を呼びかけ、積極的に外資導入に力を注いできた。90年代に入って経済成長が軌道に乗ると、台湾へもラブコールを送るようになった。1997年の「香港返還」でイギリスから香港を取り戻し、アヘン戦争以来の「百年の大計」を達成したことで、次の目標を台湾へと見定めたからだろう。

 中国と台湾の雪解けとなったのは、2008年5月、台湾で国民党の馬英九が総統選挙に勝って政権を獲得し、中台関係の改善に乗り出したときだ。馬英九が、李登輝政権時代から15年間奮闘してきた国連加盟を目指す運動をやめ、陳水扁前政権が拒否した中国のパンダ受け入れにも応じたため、台湾では一躍パンダブームが起こり、中国への関心と親しみを感じるようになった。

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