最新記事

ウクライナ紛争

【拷問】プーチンが牛耳るウクライナ東部で捕虜の身に起こったこと

2015年12月24日(木)18時00分
ハルヤ・コイナッシュ

 報告書の作成者の一人、アレクサンドラ・マトヴィチュクによると、尋問の理由はたいてい、ウクライナ寄りの「誤った意見を持っている」こと。あるいは「ウクライナ語を話す」、「ウクライナの旗を掲げている」など、ウクライナであることすべてが攻撃の理由になる。親ロシア派のヤヌコービッチ前大統領を政権の座から引きずり下ろした反政府デモ「ユーロマイダン」に参加したことや、ウクライナ統一を呼びかけるデモ行進に参加したことも、もちろん立派な理由になる。

 高齢の祖母の世話をするためにウクライナ東部のルガンスクに滞在していたジャーナリストのマリア・ヴァルフォロメイエヴァ(30歳)は、1月から人質にされている。親ロシア派勢力は、ヴァルフォロメイエヴァがウクライナ軍のために親ロシア派勢力の拠点を撮影していたと主張し、15年の「刑」に処すると脅している。

 調査対象者のうち、18%以上は殴られたり蹴られたりしたことがあり、約22%は親ロシア派勢力のライフルで殴られた。約6%は、電気ショック、手や足の指を毛抜きで強く挟むなどの拷問を受け、スタンガンのような武器による複数の傷、あるいは刃物による切り傷を負っている者もいる。捕虜となった市民のうち約75%は、銃やその他の武器で脅された。

 捕虜になったある女性は、自身の体験について次のように語っている。「オレッグ・クブラクと名乗る男に殴られた。レイプするぞと脅され、ナイフで腕や脚、首を切りつけられた」

 別の捕虜もこう話す。「親ロシア派勢力は、私の頭や背中、腕をマシンガンの台尻で殴り始めた。私を後ろ手にして、皆で殴ろうとしたり、髪をつかもうとしたりした」

「ギリシャ人」というあだ名のロシア兵

 捕虜にされたウクライナ兵と義勇兵のうち83%は、交戦、拘束にはロシア軍が直接関与していたと報告した。「ギリシャ人」というあだ名で呼ばれていたあるロシア兵は、モスクワ出身の特殊部隊「スペツナズ」の将校であることを示す書類まで見せた。別のロシア兵は、プスコフ州のパラシュート部隊の司令官だった。これが本当なら、いわばウラジーミル・プーチン大統領の配下の者だ。

 今回の調査によると、捕虜になったウクライナ兵と義勇兵のうち87%以上が、肉体的暴力や手足等の切断、辱めなど残忍な扱いを受けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オランダ半導体や航空・海運業界、中国情報活動の標的

ワールド

イスラエルがイラン攻撃と関係筋、イスファハン上空に

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ

ワールド

北朝鮮パネルの代替措置、来月までに開始したい=米国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中