最新記事

米中関係

南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?

2015年11月2日(月)12時50分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 もしアメリカの賛同がなかったとすれば、IMF関係者が、このような発言をすることは考えにくい。今月末に開催されるであろうIMFの理事会で、アメリカが拒否権を発動しないという「裏の事情」があってこそ、こういった発表になったと考えていいだろう。

 事実、9月末の米中首脳会談後、ワシントンは「人民元がIMFの基準を満たせば、SDR入りを支持する」と言っている。

 それを裏付けるように日本の麻生財務大臣は、10月2日の記者会見で、IMFの準備通貨に人民元を採用することに関して、「決して悪いこと ではない」と述べた。アメリカが賛同していなければ、日本がこのようなことを言うはずがない。

 したがって、米中首脳会談のあと、オバマ大統領の堪忍袋が切れて、ついにラッセンを南シナ海に出動させたなどという見方は、当たっていないと考える。

 ちなみに中国が日中韓首脳会談および日中会談に応じたのも、IMFにおける賛成の一票を「日本」からも欲しいからだ。
それでも「歴史問題」に関しては譲らない(これに関しては別途、書くこととする)。

2.アメリカ特殊部隊のシリア派兵

 オバマ大統領は、「過激派組織IS掃討作戦の一環として、シリアへ最大50人の特殊部隊の派遣を承認した」と、アメリカ政府高官が10月30日に明らかにした。シリアへの米軍地上部隊の派遣は初めてのことだ。

 中国ではこのニュースを大きく扱い、オバマ大統領の「失点の焦り」を詳細に分析している。中央テレビ局CCTVは「メディアの焦点」という番組で、以下のように報道した。

「オバマ大統領はシリアにおける軍事行動に関して、2年前から優柔不断な態度を取り続け、ロシアが出動する機会を与えてしまった。おまけにロシアはシリア政府の許可を得て出動しているが、アメリカはシリア政府の許可を得るどころか反政府側を応援している混乱を招いている。中東における主導権をロシアに奪われたオバマ大統領は強いプレッシャーを感じて、小規模ではあるが存在感を強めようと焦っている。今後は特殊部隊の人数を増やすとしており、シリアは米ロの代理戦争の修羅場となっていく」

 おおむね、こういう内容だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中