最新記事

米中関係

南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?

2015年11月2日(月)12時50分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

薄笑い? オバマは9月の米中首脳会談で堪忍袋の緒が切れたと言われるが Jonathan Ernst-REUTERS

 南シナ海の人工島航海権をめぐる米軍の哨戒活動は、大統領選を控えた米国のパフォーマンスだ。その証拠に米国は一方では人民元国際化に手を貸しており、シリアには特殊部隊を派遣して存在感を強めようとしている。

 10月27日、米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」が南シナ海のスービ礁などで中国が造成した人工島の12カイリ以内を含む海域を航海した。これは、国連海洋法条約(正式名:海洋法に関する国際連合条約)によれば、一つには「人工島は恒久的な港湾工作物とみなされない」(第11条)ため、領有権を主張することができないということと、その周辺12カイリ以内には他国の自由航行権があることを理由としたものだ。

 米海軍のこの行動に対して中国が反発。中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」と巡視艦「台州」が、ラッセンを追尾したと、27日に発表した。

 これを受けて日本のメディアは、南シナ海における米中両軍の緊張関係が高まったとして、いっせいに「戦争になるのか否か」とか「窮地に追い込まれているのは中国だ」、あるいは「9月に訪米した習近平国家主席との会談でオバマ大統領の堪忍袋の緒が切れた」といった類の危機感を煽る報道に満ち満ちていたが、果たしてそうだろうか?

 筆者にはむしろ、米中は水面下で握手をしており、また明らかに窮地に追い込まれているのはオバマ大統領だとしか見えない。

 その証拠を、下記の例を取って考察してみよう。

1.中国の宿願「人民元国際化」にアメリカは手を貸している?

 ラッセンが人工島12カイリ内を航行していたちょうど同じ時期の10月25日、イギリスを訪問していた習近平主席にとっては、まるで「ビッグ・プレゼント」のような報道を、ロイターがIMF(国際通貨基金)関係者の言葉として行った。

 その内容は、IMFが「加盟国にお金を融通する特別引出権(Special Drawing Rights:SDR)の構成通貨に、人民元を採用する方向で準備を進めている」というものだ。

 ドル、ユーロ、ポンド、日本円に次ぐ、第5の国際通貨(準備通貨)として認めるということである。

 中国の現時点における最大の関心事は「人民元の国際化」である。

 アメリカはこれまで、それを阻止しようと否定的な意見を述べてきた。そのアメリカは、IMFにおける17.6%(2012年)の出資比率を維持し、事実上、議決権において唯一の拒否権を持っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ANA、エアバス機不具合で30日も6便欠航 2日間

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    香港大規模火災で市民の不満噴出、中国の政治統制強…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中