最新記事

スウェーデン

ロシアの挑発で国防強化する北欧諸国

NATO非加盟のスウェーデンはフィンランド、デンマークなど周辺諸国との集団安全保障を強化中だ

2015年3月5日(木)16時55分
クリストファー・ハーレス

警戒態勢 ストックホルム群島近くに不審な潜水艦が侵入、捜索に乗り出したスウェーデン海軍の高速戦闘艇 Pontus Lundahl-TT News Agency-Reuters

 北欧諸国でロシアの攻撃に対する警戒感が高まるなか、2月にフィンランドと軍事協定を結んだスウェーデンは、今月に入ってNATO(北大西洋条約機構)加盟国のデンマークとも同様の協定を結んだ。スウェーデンのペーター・フルトクビスト国防相は、この協定をNATO加盟に向けた一歩とみるのは誤りだと強調した。

「北欧諸国が2国間及び複数の国家間の協力体制を深化することで、国防を強化し、周辺地域とより広範な領域で有効な作戦行動を実施できる」と、フルトクビストは3日、首都ストックホルムのメディアに語った。「デンマークとの協力の深化は、北欧の近隣諸国との密接な協力体制構築の一環であり、地域の安全保障の強化を目的としたものだ」

 NATO非加盟国のフィンランドとスウェーデンが協定を結んだ背景には、昨年3月のクリミア編入以降のロシアの動きがあると見ていい。昨年4月に始まったウクライナ東部の戦闘は今も収まらず、ロシアの軍用機が西側諸国の領空に接近するトラブルが相次いでいる。

 スウェーデンは非同盟中立の立場をとってきたが、ロシア空軍は13年4月、バルト海上空でスウェーデンを標的にした模擬演習を実施。昨年10月にはストックホルム群島近くのスウェーデンの領海で不審な海中活動が報告され、ロシアの潜水艦が侵入した疑いが持たれている。

 バルト諸国はいずれも昨年、領空近くを飛行するロシアの航空機を確認している。領空侵犯には至っていないが、挑発的とも見える危険な飛行に、スウェーデンとデンマークは強く抗議している。

 昨年12月には、コペンハーゲンから飛び立ったスカンジナビア航空の旅客機がロシア軍機と異常接近するトラブルが報告された。

 こうした状況下で「周辺国とのパートナーシップを強化するのはごく自然な流れだ」と、フルトクビストは言う。「(フィンランドとデンマークは)隣国であり、わが国と共に北欧防衛協力(NORDEFCO)にも加盟している」NORDEFCOは、北欧の5カ国──デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンから成る軍事協力機構だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

石破首相、辞任の意向固める 午後6時から記者会見

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 6
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 9
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 10
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中