最新記事

伝染病

エボラ蔓延の真の元凶は文化格差

西アフリカ諸国では西洋医学に対する不信感や誤った噂が感染拡大を助長

2014年8月25日(月)12時19分
インドラニ・バス

最前線の壁 医療スタッフは命懸けで感染拡大防止に取り組んでいるが、障害は多い(リベリア) 2Tango-Reuters

 史上最悪となっている西アフリカでのエボラ出血熱の流行による死者は、WHO(世界保健機関)によれば7月末時点で700人を超えた。

 血液や汗、その他の体液を通じて広まるエボラ熱の致死率は、最大90%に及ぶ。しかし現地の援助関係者に言わせれば、最も多くの死者が出ているシエラレオネとギニア、リベリアでエボラ熱の感染をここまで拡大させた大きな原因は、西洋医学への敵意だ。

「人々の姿勢が問題を大きくしている」と語るのは、この3カ国でエボラ熱予防活動を進めるユニセフ(国連児童基金)のファビオ・フリシア。彼によれば西アフリカでは、エボラ熱を病気ではなく「呪い」と考える人が少なくない。そのため医療関係者は、患者に治療を受けさせるのに大変な苦労をしている。「医療関係者が追い出されている地域もある」と、WHOの報道担当ダニエル・エプスタインは言う。

 ギニアとリベリアでは医療関係者だけでなく、患者の隔離施設も襲撃を受けた。ギニアでは医療センターを暴徒が襲撃する恐れがあったため、国境なき医師団(MSF)のスタッフが患者を避難させる事態も起きた。

 しかし現地住民の反応は、必ずしも驚くようなことではない。「想定の範囲内だ」と、フリシアは言う。「住民は(西アフリカでは)誰も知らなかった病気に襲われているのだから」

社会に広がる噂と誤解

 エボラ熱が比較的新しい病気であり、ここ数カ月で死者が急増していることから、西アフリカでは噂や誤った情報が広まりやすくなっている。多くの住民がエボラ熱を超自然的な病だと信じており、欧米の医療専門家に対する不信感が根強い。エプスタインによれば住民の間には、死の淵にあるエボラ熱患者から医師が臓器を摘出していると怖がっている人たちがいる。

 病院に連れていかれれば殺されると思い込んでいる人もいるし、エボラ熱は性的乱交に対する罰だと考えている住民もいる。乱交の報いだという見方はエボラ熱の蔓延からエイズを連想しているためだと思われるが、こうした噂のためにエボラ熱患者が汚名を着せられていると、フリシアは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

一般教書演説、イラン・関税が焦点 トランプ氏「経済

ビジネス

ブラックロック、インフレ鈍化で社債選好 国債は変動

ビジネス

日鉄、5500億円CBで過去最大調達 増額の可能性

ワールド

ウクライナ大統領、独立維持を強調 侵攻開始から4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中