最新記事

ネット

ツイッターなんてもう信用できない!

Twitter Gets Punk'd

セレブの偽者を認証したのに説明はなし。実は閉鎖的な企業体質に募る不信感

2012年2月8日(水)16時37分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 メディア王ルパート・マードックの妻ウェンディをかたる人物が作成したアカウントを、ツイッターが本人のものとして認証していた──ある意味では、どうでもいいニュースだ。わずか数日後には「成り済まし」であることが判明し、ツイッターは謝罪声明を発表した。

 問題なのは、この件に関するツイッター側の姿勢だ。同社はミスの理由を説明せず、確たる再発防止策を保証することもできていない。となれば、ツイッターの信頼性や信用性には深刻な問題があると思えてくる。

 今時のシリコンバレーの企業は開放性と透明性がモットーだが、ツイッターは情報を出そうとしない。月並みな謝罪文を発表しただけで、後は知らん顔を決め込んでいる。

 謝罪文の内容はこうだ。「当社の認証プロセスについてコメントはしませんが、『ウェンディ・デン』のアカウントが短期間、誤って認証されていたのは事実です。ご迷惑をお掛けしたことをおわびします」

 これが世界を変えたと豪語し、「アラブの春」に大きな役割を果たしたと喧伝する、あの企業の言うことか。これは、抑圧的体制を覆す力を民衆に与えるとの評判を持つ、あのツイッターと同じ企業なのか。

 いや、違う。ここにいるのは収益の上げ方が分からない企業としてのツイッター、将来的な新規株式公開で得る利益を期待して、巨額を投じた大物投資家を落胆させつつあるツイッターだ。同社では何年も前から経営陣の交代劇が続き、内紛が絶えない。大勢の幹部が去り、完全な混乱状態だという噂もある。

いたずらが暴いた偽善性

 今回の一件では、ツイッターには正しい行動ができないだけでなく、その認証済みアカウントに信頼性がないことも判明した。さらに悪いことに、同社はミスが起きた際にまともな説明ができないし、する気もないことも分かってしまった。

「偽ウェンディ」騒動のきっかけは、昨年12月末に(本物の)マードックがツイッターを始めたこと。翌日ウェンディのアカウントも登場し、本人のものと認証された。アカウントでの発言はいかにもそれらしく、メディアも早速ツイートの内容を報道し始めた。

 英紙ガーディアンの取材に応じた偽ウェンディによれば、その正体はロンドン在住のイギリス人男性。いたずらで偽のアカウントを作ったのに、認証されたことに驚いたという。

 偽ウェンディはツイッターをあざ笑う発言もしている。自分に確認も取らずに認証済みアカウントにしたと指摘し、なぜこんなミスが起きたのか話し合おうと、同社のヨーロッパ担当広報責任者に呼び掛けた。

 偽ウェンディの最大の功績はツイッターの偽善性を暴き出したことだ。開放性や即時的な情報の拡散を重視しているはずの企業が、外部と意思疎通を図る努力をここまで怠るとは。

 ツイッターは、意図的にコミュニケーションを拒んでいるように見える。サイトには電話番号や広報担当者の連絡先が掲載されておらず、広報部門と連絡を取りたければ、コンタクトフォームを送信するしかない。

 折り返し連絡してきた広報担当者によれば、ツイッターの認証プロセスは「ケースごとに異なって」おり、今回のような事件は過去に例がないという。

 サイトに連絡先を掲載していないのはなぜか。返ってきた答えは「ツイッターは極めて効率的なシステムを採用しているから」だった。

 偽ウェンディは今もせっせとツイートしている。マードック夫妻をネタにした冗談から始まった今回の騒動だが、笑いものになったのはツイッターだ。

[2012年1月18日号掲載]

ニュース速報

ワールド

インドネシアの第1四半期GDPは+4.92%に鈍化

ワールド

ブラジル検察、汚職捜査妨害で大統領の捜査開始を要請

ワールド

豪総選挙7月2日に、予算案は法人減税など盛り込む

ビジネス

次回米FOMC、英国民投票が大きく影響へ=アトラン

MAGAZINE

特集:世界を読み解く「独裁者」名鑑

2016-5・ 3号(4/26発売)

デマゴーグから「ソフト独裁者」、「使えない人」まで新たな時代を読み解くための世界の指導者リスト

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

    会議に秘密警察が乗り込んできて連行――恐怖政治…

  2. 2

    大卒の価値が徐々に低下する日本社会

    高い学歴に見合った仕事が少ない「オーバーエデュ…

  3. 3

    中国犯罪組織に「売買」される北朝鮮の女性たち

    国内で売春が広がっており、それに目をつけた中国…

  4. 4

    世界最悪のタックスヘイブンはアメリカにある

    法人を引き寄せて他州の税収を吸い取ってしまうブ…

  5. 5

    荒れる米大統領選の意外な「本命」はオバマ

    共和党の醜い舌戦のおかげで人気回復のオバマがい…

  6. 6

    南シナ海で暴れる中国船に インドネシアの我慢も限界

    拿捕した漁船を中国に奪回されたインドネシア 。…

  7. 7

    悪魔のように殺し、聖人のごとく慕われた男

    コロンビア麻薬カルテルの帝王を描いた『エスコバ…

  8. 8

    20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る

    15歳で起業、一度は一文無しになりながらも、2…

  9. 9

    挑発行為に隠された北朝鮮の本音

    ベルリンの秘密会合で驚きの提案が──平和協定を…

  10. 10

    オフィスエアコンの点検義務化は、企業の省エネ対策にも

    ダイキンエアテクノが提供する空調点検サービスの…

  1. 1

    グラフでわかる、当面「円高」が避けられないただ1つの理由

    〔ここに注目〕物価 為替市場において円高が…

  2. 2

    北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか?

    〔ここに注目〕JR北海道の経営母体 北海道…

  3. 3

    「ケリー広島献花」を受け止められなかったアメリカ

    今週11日、G7外相会議で広島を訪れたアメリ…

  4. 4

    「パナマ文書」問題がアメリカでは大騒ぎにならない理由

    パナマの法律事務所モサック・フォンセカが作成…

  5. 5

    現実味を帯びてきた、大統領選「ヒラリー対トランプ」の最悪シナリオ

    共和党に2カ月遅れて、民主党もようやく今週1…

  6. 6

    1000件以上黙殺されていた神父による児童への性的虐待

    アカデミー賞で作品賞と脚本賞に輝いたトム・マッカ…

  7. 7

    パナマ文書の嵐をやり過ごす共産党幹部の「保護傘」

    今から1年前、ある匿名の人物が一千万件を超すパナ…

  8. 8

    拒食症、女性器切断......女性の恐怖・願望が写り込んだ世界

    写真は、とりわけ優れた写真家の写真は、音楽に非常…

  9. 9

    テレビ報道の自由と中立性はどう確保したらいいのか?

    新聞や書籍に特段の「中立性」は求められません…

  10. 10

    【市場】いよいよ終わりの始まりが始まった

    いよいよ終わりの始まりが始まった。それは日銀のマ…

  1. 1

    九州で強い地震相次ぐ、熊本で最大震度7 少なくとも9人死亡

    14日夜から九州地方で強い地震が相次ぎ、最初…

  2. 2

    日産自、セレナなど約72万台リコール バックドアの不具合で

  3. 3

    韓国総選挙で与党大敗、朴政権の「レームダック化」指摘する声も

    13日投開票された韓国総選挙は、朴槿恵大統領…

  4. 4

    OPEC原油需要予想引き下げ、さらなる下方修正も

    石油輸出国機構(OPEC)は13日発表した月…

  5. 5

    アングル:中国人の爆買い担う「代購」、政府が取り締まり強化

    中国は、海外から発注された商品に対する税金を…

  6. 6

    第1四半期の中国GDP伸び率、前年比+6.7% 予想と一致

    中国国家統計局が15日発表した第1・四半期の…

  7. 7

    「パナマ文書」、中国当局が報道規制 記事削除や検索制限も

    パナマの法律事務所から機密の金融取引文書、い…

  8. 8

    カナダ中銀、金利据え置き 財政措置唯一のけん引役と指摘

    カナダ中銀は13日、予想通りに政策金利を0.…

  9. 9

    「ジカウイルスは小頭症の原因」、米CDCが結論

    米疾病対策センター(CDC)のフリーデン所長…

  10. 10

    著名人巻き込む「パナマ文書」の衝撃、各国政府が調査開始

    租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律…

Book Lover’s Library
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

破壊王! トランプの「政治テロ」が促すア

STORIES ARCHIVE

  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月