最新記事

動物

象は奇跡的な進化を経て巨大化した

恐竜の時代にネズミのサイズだった哺乳類が大型化した仕組みが明らかに

2012年2月3日(金)17時15分
ステイシー・リースカ

生命の神秘 小型化の進化は速いが、大型化にはとてつもない時間がかかる Gopal Chitrakar-Reuters

 象は我々が思っていた以上にタフな生き物なのかもしれない。象は地球上に生息する陸上動物で最も体の大きな動物だが、これほどの巨体になるまでの道のりが非常に長く険しかったことが明らかになった。

 1月末に米国科学アカデミー紀要に発表された論文「陸生哺乳類の最大サイズの進化」によれば、象が現在のような大きさに進化するのに要した年月は、実に2400万世代分。「大型動物は進化的変化の積み重ねの結果であり、そうした変化には時間がかかる」と、共同研究者の一人であるモナシュ大学(オーストラリア)の進化生物学者アリステア・エバンズはワイアード誌に語った。

 研究の結果、恐竜が繁栄していた時代の地球上では、象などの大型陸上動物は現在のネズミのようなサイズの小動物だったことがわかったという。「白亜紀と古第三紀の境の時期(K-Pg境界)における恐竜の絶滅は、その後に続く陸上哺乳類の多様化への扉を開く重要な出来事だった」と、論文の要約文には記されている。陸上哺乳類の最大サイズはK-Pg境界以降に急激に大型化した後、「各大陸において4000万年前に横ばい状態になり、その後はほぼ変わっていない」。

小型化のスピードは大型化の100倍

 哺乳類の大型化にストップをかけた要因は何か。人類だ。
 
 人類が地球を支配するようになると、象をはじめとする大型の陸上哺乳類が巨大化し続けるためのスペースと食糧が少なくなった。人類が地球上に存在する限り、どんな哺乳類もこれ以上大型化することはないだろうと、研究者らは考えている。

 一方、環境の変化に順応して小型化の道を歩んだ動物もいるが、小型化に要する時間はずっと短い。小型化の進化のスピードは大型化の100倍。例えばヤマネははわずか10万世代で今のような小ささになったという。

 今度どこかで象を見かけたら、太古の昔からの苦労をねぎらって、大きな背中をなでてみてはどうだろうか。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD

ワールド

米軍、南米に最新鋭空母を配備 ベネズエラとの緊張高

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中