最新記事

報道

「安全デマ」と「危険デマ」の不毛な論争

日本メディアの腰の引けた原発報道は「東電広告費の呪縛」が本当の原因ではない

2011年6月8日(水)17時05分
長岡義博(本誌記者)

複雑な関係 東電の巨額広告費が報道に影響を与えたとは限らない(清水社長の会見) Kiyoshi Ota-Bloomberg/Getty Images

 東京電力福島第一原発の事故後、日本メディアの報道に「安全デマ」という批判が浴びせられている。新聞やテレビが政府・東電と一体化して、本当は安全でないのに「安全だ」という情報を垂れ流している──「安全デマ」とはそんな意味だが、既存メディアを声高に非難するのは、何も匿名ネットユーザーとは限らない。

「僕は震災直後から国内外発の原発関連情報をツイッターで大量にリツイートした。ツイッターでも述べたが二つの動機がある。第一は、東電や政府の発表やそれを垂れ流すマスコミ情報を鵜呑みにするのは危ないということ。これらの情報は愚民政策を前提としている」

 社会学者の宮台真司・首都大学東京教授は先月、自身の公式ブログ「MIYADAI.com」にこう書いた。先月中旬、東電が福島第一原発1〜3号機のメルトダウンが事故直後に始まっていたことを認めると、東電だけでなく既存メディアに対しても「東電と一体化して2カ月も情報を隠蔽していた」と批判が集まった。

「安全デマ」と叫ぶオピニオンリーダーやフリージャーナリストは宮台1人ではない。その一方で、批判された記者や学者側が彼らを「『危険デマ』の発信源」と呼ぶ泥仕合が続いている。

 ただ「安全デマ」と「危険デマ」の応酬は正面からぶつかり合っているように見えて、実際には議論があまりかみ合っていない。...本文続く

──ここから先は6月8日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年6月15日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

東日本大震災の発生からまもなく3カ月。水曜発売Newsweek日本版のカバー特集は「検証 3.11」です。忘れられた被災者や深刻なフクシマ差別、脱原発の可能性、新聞・テレビの安全デマ問題、支援のあり方について、日本メディアと違った角度で迫ります。
■現地ルポ 「フクシマ」に残った家族の苦悩
■脱原発のリアルコスト
■在宅被災者、壊れゆく集落

他にも
■白人中年エリート、大氷河期に死す
■大腸菌パニック、ヨーロッパ野菜の受難
■ガガ=自己啓発スター?、など
<最新号の目次はこちら

[2011年6月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中