最新記事

アフリカ

コートジボワールから始まる選挙革命

国連が力づくで独裁者を排除したのは、選挙結果の捏造はもう許さないというアフリカ全土への強烈なメッセージだ

2011年4月13日(水)17時13分
アンドルー・メルドラム

もう居座れない 選挙に負けても権力を手放さず拘束されたバグボ前大統領(4月11日) Reuters

 昨年11月の大統領選後、対立が激化していた西アフリカのコートジボワール。大統領職に居座り、最大都市アビジャンにある大統領公邸の地下塹壕に立てこもっていたローラン・バグボ大統領(65)が11日、ついに身柄を拘束されたことで、この国は何とか内戦の瀬戸際から引き返すことができた。

 大統領選で当選し、国際社会からも勝者と認められているアラサン・ワタラ元首相(69)には、今後困難な課題が待ち受けている。国民と一丸になり、コートジボワールの民主主義と経済を再建させなければならない。世界最大規模のカカオ豆生産・輸出国であるコートジボワールにとって、密接にからみ合う西アフリカ諸国の経済にとって、その任務は非常に大きな意味を持つ。

 さらに意義深いのは、バグボの拘束がアフリカ各国のリーダーたちに強烈なメッセージを送ったことだ――選挙の結果を尊重せよ、と。

 選挙結果に従うことはアフリカの民主主義と経済にとって極めて重要だが、これまであまりに多くの国々であまりに長い間ないがしろにされてきた。その流れが変わりつつあるようだ。

 アフリカ諸国の中でも特に強固だったチュニジアやエジプトの独裁政権は、反政府デモによって打倒された。こうした民主化運動によって、各国の長期政権や独裁者たちは動揺し、国民の意思を無視すれば自分の地位が危うくなることを身にしみて感じるようになった。

 選挙結果を尊重することは、これから膨大な数の選挙が予定されている今のアフリカにとっては特に重要だ。2011年中にアフリカ諸国で40以上の選挙が予定され、その半数近くが大統領選。アフリカ大陸が54カ国で構成されていることから見れば、大変な数だ。さらにその中には、ナイジェリアやベナン、マダガスカル、ザンビア、ジンバブエなどの主要国も含まれている。

国内外で拒絶された不正行為

 潘基文(バン・キムン)国連事務総長も、その重要性をしっかりと受け止めているようだ。「今年、多くの国で大統領選が行われるアフリカ大陸にとって、コートジボワールで起こることの意味は非常に大きい」と、潘はコートジボワールで混乱の続いていた4月初頭に発言した。彼は国連が支持するのは「民主的な選挙で選ばれたリーダー」だけだと警告し、国連は「罪なき市民を守り、指導者たちの残虐行為を裁くことに全力を傾ける」と話した。

 この言葉は、バグボにとってはまさに運命を暗示する言葉となった。コートジボワールは03年に平和協定を締結し、前年から続いていた内戦を終結。さらに04年には国連決議が採択され、1万人近い国連平和維持部隊が駐留していた。バグボの最大の過ちは、国際社会が注視する中で平然と選挙結果を捻じ曲げようとしたことだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中