最新記事

北朝鮮

金正日を振り回す軍部の暴走

韓国への砲撃は交渉の道具などではない軍のタカ派が実権を握る本当の「先軍政治」が始まった

2010年12月1日(水)16時02分
ジェリー・クオ、横田 孝(本誌編集長・本誌国際版東京特派員)、ジョン・バリー(軍事問題担当)、メリンダ・リウ(北京支局長)

我らの時代 「先軍政治」を展開してきた金正日が今は軍の言いなりか(10月10日、平壌) Petar Kujundzic-Reuters

 朝鮮戦争の休戦以来、半世紀以上ぶりに民間人が軍事攻撃の標的になり、しかも死者が出たことの衝撃はもちろん大きい。しかし11月23日、北朝鮮軍が韓国の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃した事件が不安をかき立てる理由は、それだけではない。

 北朝鮮は最近、3月の韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事件や延坪島砲撃直前のウラン濃縮施設の公表など、挑発的な行動を繰り返してきた。その点と考え合わせると、今回の軍事行動を北朝鮮の毎度お得意の「外交ショー」と片付けるわけにはいかない。

 ところが先進諸国の政府当局者や朝鮮半島の専門家は、これまでと同様、今回の砲撃事件も交渉上の駆け引きのための行動と見なしている(もしくは、そうであってほしいと願っていると言うべきかもしれないが)。特に、極めて深刻な食糧不足が近く予想される状況で、食糧支援などの譲歩を国際社会から引き出すことが北朝鮮の狙いだと分析している。

 残念ながら、その見方は正しくない。北朝鮮は今後、今の最高指導者である金正日(キム・ジョンイル)総書記が父親の金日成(キム・イルソン)から権力を引き継ぎつつあった時期以来の強硬路線に突き進む可能性のほうが高い。もしそうだとすると、交渉カードとしての行動でない以上、最大の友好国の中国も含めて世界の国々は、北朝鮮の常軌を逸した行動に歯止めをかける手だてをほとんど持っていない。...本文続く

──ここから先は本日発売の『ニューズウィーク日本版』 2010年12月8日号をご覧ください。
<デジタル版のご購入はこちら
<iPad版、iPhone版のご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください

[2010年12月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5

ビジネス

英建設業PMI、10月は44.1 5年超ぶり低水準

ビジネス

ECBの金利水準に満足、インフレ目標下回っても一時
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中