最新記事

対談

ツイッターが変える日中の未来(1)

2010年11月2日(火)17時18分

津田:迂回はある程度意識の高い人たちにとっては一般的なのですか?

安替:アクセスブロックを回避している人は数百万人はいるはずですが、その数百万人すべてがツイッターを使っているわけではありません。ただアクセスブロックを乗り越えるのはとても簡単です。

津田:アクセスブロックを乗り越えてたどり着いた先のサイトが中国政府の検閲を受けている、という危険性はないんですか?

安替:中国政府はツイッターに手を伸ばしてその発言を削除することはできないのですが、もちろん監視はしています。1つ例を挙げると、最近重慶市で反日デモがありましたが、1人の女性が「『(ノーベル平和賞を受賞した劉)暁波おじさん、受賞おめでとう!』というプラカードをもって歩くわ」と書き込んだところ、警察が飛んで来て20数時間監禁されました。

津田:ツイッターを利用している10万人は言論の自由に伴うリスクを恐れず発言している、と?

安替:そうです。14億人のうち10万人ぐらい根性のある人たちがいてもいいじゃないですか(笑)。ツイッターとマイクロブログの最大の違いは国際性。ツイッターではアメリカや日本の人とも話ができますが、マイクロブログは国内だけ。今回の反日デモは中国国内では基本的に報じられていなかったのですが、ツイッターで得た日本国内の情報がツイッターを通じてどんどん広まりました。

津田:日本メディアが人民日報の報道の一部を切り取ってあたかも中国全体の論調であるかのように伝え、中国メディアが産經新聞を日本の現在の主要な論調であるように伝えることで誤解が広がる、という問題があります。一方で日本のツイッターユーザーは日本人同士の交流が中心。だからこそ(AV女優の)蒼井そらさんのような存在が出て来たことが衝撃的だったのですが、ツイッターがメディアとメディアの関係を変える可能性をどう考えますか?

安替:日本メディアが人民日報など政府系メディアに頼って報道するのはまったく間違い。それは日本メディアが普段から国内報道でも政府の情報に頼っていることの現れではないでしょうか。日本メディアはインターネットが中国に革命的な変化をもたらしたことをよく理解していません。ネットは雇用形態などメディアを取り巻く状況を完全に変えました。まず市場化によって言論の主流が官製メディアの人民日報から、市場で支持されている南方日報グループのメディアに変わった。メディアのネチズン化も進んでいます。

それは一番よく現れたのが、昨年のオバマ訪中です。オバマ訪中に際して、北京のアメリカ大使館がやったことは中国の有名ブロガーを集めてブリーフィングをすること。そしてオバマ自身がインタビュー先として選んだのは、人民日報でもCCTV(中国中央電視台)でもなく南方日報グループの南方週末という週刊紙でした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀は8日に0.25%利下げへ、トランプ関税背景

ワールド

米副大統領、パキスタンに過激派対策要請 カシミール

ビジネス

トランプ自動車・部品関税、米で1台当たり1.2万ド

ワールド

ガザの子ども、支援妨害と攻撃で心身破壊 WHO幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中