最新記事

スマートフォン

スマホに夢中で誰も銃に気付かなかった

スマートフォンやタブレット端末に没頭するあまり、撃たれるまで周囲を意識しなくなる危うさ

2013年10月9日(水)16時49分
ウィル・オレムス

みんな夢中 会話中もスマートフォンは手放せない Lucas Jackson-Reuters

 以下は、サンフランシスコ・クロニクル紙のビビアン・ホーの驚くべきリポート。

「サンフランシスコ市営鉄道に乗っていた男が、混雑した車内で45口径の拳銃を取り出した。男は銃を何度も出し、あちこちに向けた。周囲には多くの乗客がいたが、誰も男に反応しない。スマートフォンとタブレット端末に夢中で、学生の背中に男が発砲するまで銃に気づかなかった」

 事件の日の監視カメラの映像によれば、サンフランシスコ州立大学の学生、ジャスティン・バルデズ(20)は犯人と無関係なのに殺された。 当局はニコム・テパケイソン(30)を容疑者として逮捕。検察官によれば、容疑者は無差別殺人の獲物を探していたようだという。
 
 スマートフォンが普及する以前、列車の乗客はこんなに何かに没頭していただろうか? 本か雑誌ならそうかもしれない。しかしサンフランシスコ州検察官のジョージ・ガスコンは、「テクノロジーが問題を悪化させている」とクロニクル紙に語った。「(犯人は)動きを隠していなかった。銃ははっきり見えている。乗客たちは犯人のすぐ近くにいたが、だれも銃を見ていない。メールを書いたり読んだり、いろんなことをするのに夢中になっていたんだ」

 当局は、文章入力やウェブページの閲覧、ゲームなどの習慣のせいで、引ったくり犯に対し無防備になっていると長年警告してきた。だがガスコンは、外の世界を遮断してキャンディークラッシュに夢中になっているとき、スマートフォン利用者は近隣者も危険にさらしていると主張した最初の人間の1人だ。彼はおそらく正しい。

 小さな画面、小さなボタン、とりわけヘッドホンを装着しているさまは、ページの端を折ったペーパーバックや朝刊に顔を埋ずめている姿よりも外の世界から隔絶されて見える。さしあたっての解決法は、グーグル・グラスに拳銃を検出するソフトウエアを搭載するぐらいしかなさそうだ。そのうち監視カメラが銃器をすぐに認識でき、何らかの警報を鳴らすようになるのかもしれない(誤警報が厄介になるだろうが)。

 あるいは――これからは頭を上げて現実世界に目を向ける、そんな努力をちょっとしてみるのはどうだろうか。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者43人に、子ども15人犠牲 

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 中間選挙にらみ

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中