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進化論を小学校で教えない愚

2009年11月26日(木)17時20分
メアリー・カーマイケル

インタラクティブ教材で流れが変わる?

 進化論に関する教育玩具シリーズ「チャーリーズ・プレイハウス」のクリエーターであるケイト・ミラーも、子供は直感的に「自然淘汰を理解する」という。子供を長い時間、鳥の巣箱の前に立たせておくだけで勝手に自然の摂理に気がつくというわけだ。

 イギリスでは最近、小学校のカリキュラムに進化論を教えることが義務付けられた。アメリカの各州もその流れに続くべきだ。

 進化論を教えない生物学は真の科学ではなく、単なる暗記だ。どんなに幼い子供であっても、自然科学との出会いはもっと面白いものであるべきだ。

 コンコード・コンソーシアムではすでに、小学4年生に進化論を教えるカリキュラム「エボリューション・レディネス」の開発に乗り出している。テクノロジーを駆使したインタラクティブなカリキュラムで、マサチューセッツ州やミズーリ州、テキサス州の学校で研究授業を行っている。

 理論をわかりやすく整理しているものの、子供向けに単純化しすぎているわけではない。「10歳の子供にとっては、次の誕生日でさえずっと先のこと。百万年単位の話を理解するのは非常にむずかしい」と、このプロジェクトを主導するホルウィッツは言う。「だから、数百万年ではなく数世代の話に置き換えている」

 進化をもたらす遺伝子変化の説明を避け、マクロレベルで話すことも心がけている(ダーウィンの時代には遺伝科学は解明されていなかったのだから、ダーウィンと同じアプローチといえる)。

 今のところ、「エボリューション・レディネス」への反響は上々だが、親からの抵抗がないわけではない。「『私はキリストを信じている。こんなカリキュラムは不要だ』と教師に電話してきた親が少なくとも一人はいる」と、ホルウィッツは言う。「でも、怒った人々が大挙して押し寄せる事態にはなっていない」

 子供たちについて「自信をもって言えることが一つある。彼らは退屈していない」

 ダーウィンとその子供たちもきっと、このカリキュラムに賛同するはずだ。
 

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