最新記事
生物多様性

イースター島付近の海嶺で50種以上の新種生物を発見

Scientists Discover 50 New Deep-Sea Species Near Easter Island

2024年4月24日(水)14時10分
ジェス・トムソン
(写真はイメージです) Thomas Griggs-Shutterstock

(写真はイメージです) Thomas Griggs-Shutterstock

<専門家は「詳しく調査すべき標本も多数あり、この数はさらに増えそうだ」と主張している>

新たに発見された50種以上の新種は、太平洋の海嶺に潜んでいた。

【動画】イースター島付近の海嶺で50種以上の新種生物を発見

そうした新種に加えて、それまでこの海域にはいないと思われていた100種あまりのカニ、サンゴ、ウニ、イカ、魚類、軟体動物、ヒトデ、ガラス海綿類、ヒゲナガチュウコシオリエビなども見つかった。

そうした種の1つ、ヤスリサンゴは、光合成で生きる生物の発見場所として世界最深の記録を更新した。

発見したのはシュミット海洋研究所の国際チーム。イースター島(現地語でラパ・ヌイ)と南米チリの間に連なる全長約2900キロの海底山脈サラス・イ・ゴメス海嶺を探査した。

この海嶺に棲む生物は地球上で最もユニークで多様性に富んでいる。固有種の割合が極めて高く、海底に生息する生物にとって欠かせない環境があり、回遊種(クジラ、ウミガメ、メカジキ、サメなど)の通り道があり、80種を超す絶滅危惧種がいる。今回、ここに160種以上が加わった。

「今回の探査の大きな成果として、一見して新種と思われる種を50~60種も発見した。詳しく調査すべき標本も多数あり、この数はさらに増えそうだ」。探査に参加したアリアドナ・メチョはそうコメントしている。同氏はバルセロナスーパーコンピューティングセンター-セントロナシオナルデスーパーコンピューター(BSC-CNS)気候変動性・変動(CVC)局の研究者。

「世界最深級の深場サンゴも発見され、ポリネシアに生息するこの生物の分布域が数百キロ拡大した。深い場所に生息する海綿やサンゴも見つかっており、脆弱なその生息地を保護する必要があると考える」(メチョ)

今回の探査は、米テキサス大学リオグランデバレー校のエリン・E・イーストンと、チリのカトリカデルノルテ大学のハビエル・セラネス率いる研究チームが2月24日から4月4日にかけて実施。サラス・イ・ゴメス海嶺を構成する110の海山の多くを調査して、面積7万7000平方キロ以上に及ぶ海底地図を作成した。その中には、これまで記録されていなかった海山6山も含まれる。

「この2回の探査で我々が明らかにした驚くべき生息地と動物の集団は、この最果ての海域に関して我々がほとんど何も知らない現実を見せつけている」とセラネスは述べ、「こうした探査は、この地域の生態学的重要性について意思決定者に認識してもらい、領海内、さらには領海を越えて保護戦略を強化してもらう役に立つだろう」と期待する。

今回の探査のわずか数カ月前、ナスカ海嶺とフアン・フェルナンデス海嶺で行われた別の探査でも、新種と思われる生物100種類以上が見つかっていた。この2回の探査は、こうした海域が生物多様性に富み、従って保護が必要なことを物語る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中