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アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えているのか...数字が語る健康危機

Behind the Drop in US Obesity

2025年12月28日(日)10時00分
ジャスミン・ローズ
アメリカの国民病ともいわれる肥満が減少傾向にある PEYKER/SHUTTERSTOCK

アメリカの国民病ともいわれる肥満が減少傾向にある PEYKER/SHUTTERSTOCK

<アメリカで成人の肥満率が減少に転じた。一方で、糖尿病と診断される人は増加している。ダイエット薬として注目を集めるGLP-1受容体作動薬の普及は、この現象とどのように結びついているのか。最新データをもとに、専門家の見方を探る>


▼目次
糖尿病が増え続けている理由とは?
糖尿病診断数が「より増える可能性」も

アメリカの成人肥満率は近年、次第に低下している──米調査会社ギャラップが2025年10月に発表した最新調査によれば、肥満率は22年に過去最高の39.9%を記録したが、25年は37%に下がっている。一方、糖尿病診断率は上昇し、25年は過去最高の13.8%に達している。

米疾病対策センター(CDC)の定義では、身長と体重から算出するBMI(ボディー・マス・インデックス)が30以上で肥満とされる。2型糖尿病や高血圧、心疾患、脳卒中といった数多くの健康問題と関連付けられるなか、肥満はアメリカにとって重大な懸案事項になっている。

今回の調査は、08年に開始されたギャラップ全米健康・ウェルビーイング指数の一環だ。開始当時の肥満率は25.5%。その後、22年に過去最高を記録したが、以降の3年間は低下傾向にあるという。

同時に起きているのが、糖尿病治療薬として開発されたGLP-1受容体作動薬、オゼンピックやウゴービの使用拡大だ。これらの薬には食欲を抑える効果があり、肥満治療薬としても利用されている。

ギャラップの調査によれば、減量目的でGLP-1薬を注射したことがあるというアメリカ人は、24~25年の間に約7ポイント増加している。

GLP-1薬の使用率は男性より女性のほうが高く、22年以降の肥満率の低下幅を男女別に見ると、女性のほうがわずかに大きい。

それならば、GLP-1薬が肥満率の低下に何らかの貢献をしているのかもしれない。しかし、複数の専門家が本誌に指摘するところによれば、この薬は多くの人が考えるほど、目立った影響を与えているわけではなさそうだ。


インスリン分泌を促し、血糖値の上昇を抑えるGLP-1薬は、一般的には2型糖尿病の治療に用いられる。だが最近では減量や肥満治療にも使われており、効果が大きいダイエット薬として人気が高まる一方だ。

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