最新記事
ライフ

なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老後を軽くする脳の使い方

2025年12月19日(金)11時23分
和田 秀樹(精神科医 *PRESIDENT Onlineからの転載)
なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか――老後を楽にする記憶の扱い方

IndianFaces -shutterstock-

<記憶にとらわれ続けると、人生後半が重くなってしまう。精神科医・和田秀樹氏が、心を軽くする「記憶の上書き」という考え方を紹介する>

老後を幸せに過ごすためには、どんなことに気を付ければいいのか。医師の和田秀樹さんは「若い頃の後悔を引きずり続けないほうがいい。老後になっても受験や就活の失敗を悔やむ人は少ない。考えても解決しないことは忘れ、"今ある幸せ"に目を向けることが大切だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『医師しか知らない 死の直前の後悔』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

ネガティブな出来事のほうが記憶に残りやすい

高齢者からよく聞く後悔には、「もっと挑戦しておけばよかった」とか「失敗を恐れずに踏み出していればよかった」などの「やらなかった後悔」が多いのですが、その一方でもう少し若い世代には、過去の失敗を引きずって苦しみ続けている人もいます。

「あのとき、あんな失敗さえしなければ、自分の人生は違っていたかもしれない」


そんなふうに過去の選択を何年も悔やみ続け、気に病んでしまう人がいるのです。実際にそれが不眠やうつ症状につながっているケースもありますし、最悪の場合、死を選んでしまう人もいます。

たとえば、若いころに仕事で大きな失敗をして会社に迷惑をかけてしまった経験が何年経っても心のなかに残っていて、ちょっとした場面でも「また失敗するかもしれない」と不安になってしまうという人の声もたくさん聞いてきました。

しかし、そもそも人間の脳というのは、新しい体験をすることでそれまでに記憶されたことが上書きされていく仕組みになっていると考えられています。そうでなければ、膨大な量の情報を抱えたまま、日常生活を送ることは難しいでしょう。

ですから、理屈からいえば、どんな経験でも新しい刺激や出来事に触れていくうちに、だんだん思い出すことも減っていくものです。ある程度のことは時間とともに忘れられるからこそ、人間は精神のバランスを保って生きていけると言ってもいいかもしれません。

ただ、なかにはどうしても、過去の辛(つら)い記憶や嫌な体験をうまく手放すことができず、ずっと引きずってしまう人がいます。なぜかというと、人間は楽しいことよりもネガティブなことのほうが記憶に残りやすいからです。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中