最新記事

映画

絶好調ハリポタを待つ最後の敵

公開初日に全米の興行記録を塗り替えた最新作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』。魔法使いのメガネっ子はあの映画界の伝説のヒーローを超えることができるのか

2009年7月17日(金)17時20分
セーラ・ボール

王者への道 過去のシリーズものの中でもハリー・ポッターの存在感は抜群 ©2009 Warner Bros. Ent. Harry Potter Publishing Rights cJ.K.R.

 魔法の杖が武器のメガネっ子、ハリー・ポッターは銃を片手に映画界に君臨してきた同じイギリス人のジェームス・ボンドからその座を奪い取ることに成功したらしい。

 7月15日午前0時1分に全米で封切られたシリーズ第6作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は初日だけで計2220万ドルを売り上げ、初回上映の興行記録を更新した。このままいけば、週末の興行収入も過去の記録を破るだろう。前売り券の売り上げもシリーズのどの作品よりもよく、、『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』に次いで史上2番目となる売り上げを達成した。

 世界規模の盛り上がりを見ると、この魔法使い映画が「007」シリーズを超えるのは間違いなさそうだ。007シリーズの23作品は全世界で計50億7400万ドルを売り上げているが、ハリー・ポッターシリーズの5作目までの売り上げはそれにわずかに及ばない合計45億ドルだ。

 米国内だけを見れば、ハリー・ポッター作品の売り上げは計14億1000万ドルで、スター・ウォーズ(シリーズ合計19億ドル)と007(16億ドル)、バットマン(ティム・バートンが監督を務めた89年のリメイク版からの7作品で14億5000万ドル)を下回っている。だが今回の第6作でこれらシリーズ作品を超えると見られている。

スター・ウォーズも敵じゃない

 映画評論家たちは、ハリー・ポッターシリーズは今後の続編でも初回上映の売り上げ記録を更新できると考えている。シリーズ最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』(邦訳・静山社刊)の映画版は2作品に分けられる予定だ。「特にシリーズものの特徴だが、完結編が最高収益を上げる可能性がある」と、興行成績調査会社ボックス・オフィス・モジョのブランドン・グレイは言う。

 本当にこの魔法使い映画は今後も好成績を継続できるのだろうか。望む限り継続できるだろう、と映画批評サイト「ロッテン・トマトズ」の編集長マット・アチティは言う。「ジョージ・ルーカスがずっと昔に制作を約束した続編3作品を実現しない限り、スター・ウォーズも敵ではない」

 アカデミー賞を受賞した「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズは、監督のピーター・ジャクソンとギレルモ・デル・トロが「続編」の製作を予定しているが、一般受けする作品にはなりそうにない。バットマンシリーズも再び成功が繰り返されることはないだろうと、グレイは言う。『ダークナイト』の大きな成功は、出演俳優の死というニュースが話題になったからだ。

最大のライバルは007シリーズ

 過去40年で23作品を送り出し、6人の俳優が主役を演じ、多くの制作費が使われてきた007シリーズは、クオリティーにこそ一貫性がないがもっとも回復力がある。まるでハリー・ポッターに出てくるボルデモート卿のようだ。「今後10~12年で3、4作品が製作されれば007シリーズは再び返り咲く。ハリー・ポッターシリーズの最大のライバルはボンドになる」と、アチティは言う。「キャラクターがまだ生きている」

 ハリー・ポッターの完結編を2作品に分けるのは賢明ではないかもしれない。グレイによると、その戦略はうまくいかない場合もありえる。「観客はどちらの作品も単独で満足できる仕上がりになることを期待しているし、成功にはそれが不可欠だ」と彼は言う。「(最後から2作目が)最終作に完全に頼りきるような作品になれば、成功は難しい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中