最新記事

株の基礎知識

バブルを生きた元証券ウーマンが振り返る日経平均の30年、そしてこれからの「3万円台の世界」

2021年5月12日(水)12時25分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

日経平均株価の今昔比較

あれから30年の時を経て......

2021年現在、世界的にワクチン接種は始まったものの、新型コロナウイルスの脅威による深刻な状況は続いています。日経平均株価が3万円台に乗せたといっても、ファーストリテイリング<9983>やソフトバンクグループ<9984>など一部の値がさ株が指数を大きく押し上げている感が歪めません。

■30年前とはもはや「別物」になった日経平均株価

2021年2月時点でのNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は高水準ですが、これは、日経平均株価が一部銘柄に引っ張られている一方、TOPIXは追いついていない状態を表しています。つまり多くの人の保有株は大して上昇しておらず、ましてやバブルの実感などないのが本当のところではないでしょうか。

kabumado20210512-30yrs-chart2.png

現在の日経平均株価は、上位3社(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン<8035>)で構成比率の4分の1を占めているため、これら銘柄の動きが大きく反映されます。

そもそも、1989年の日経平均株価と2021年の日経平均株価では、構成銘柄の3分の2以上が入れ替わっており、もはや「別物」と言ってもいいでしょう。

こうした点から考えても、単純に昔と今の日経平均株価を同じ「3万円」という土俵に上げて議論するのは疑問が残るところなのです。

■バリュエーションで見ても現在はバブルではない

次に、30年前と今のバブル度をバリュエーションで確かめてみましょう。

現在の日経平均株価のPERは22倍です(各構成銘柄のPERを平均化したもの)。過去の推移を見ると約12~15倍であり、現在の水準は確かに高いといえます。

しかし、1989年12月末には、実に60倍を超えていました。これは、資金を投じても回収には60年かかるということ。バブル絶頂期には80倍まで達したのです。

グローバルで比較してみても、当時アメリカやヨーロッパなど他市場のPERは20倍以下で、日本株だけが超割高水準でした。会社同士が相互に株式を所有し合う「持ち合い株構造」という日本市場独自の問題が背景にあったとはいえ、いかに高い水準だったかがわかるのではないでしょうか。

■銀行株はいずこ? 激変した時価総額の顔ぶれ

時価総額上位の顔ぶれも、この30年で様変わりしました。

東証1部の時価総額を上から見てみると、1989年は日本電信電話<9432>、日本興業銀行(現・みずほ銀行)など上位10銘柄のうち銀行が6銘柄を占めています。

対して、現在では銀行の姿は消え、トヨタ自動車<7203>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>など、世界で高シェアな商品を持つ企業が並んでいるのが特徴です。

kabumado20210512-30yrs-chart3.png

ちなみに、ソフトバンクグループやファーストリテイリングの上場は1994年。30年前当時は、まだ株式市場にいなかったのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中