最新記事

米大統領選2020 アメリカの一番長い日

著名エコノミスト9人による次期大統領への助言──コロナで深刻な打撃を被った米経済への処方箋は?

RX FOR AN AILING ECONOMY

2020年11月18日(水)18時15分
ピーター・カーボナーラ、スコット・リーブス(本誌記者)

R&D投資で科学技術大国の復活を目指す

■ジョナサン・グルーバー(マサチューセッツ工科大学教授、経済学)

次期大統領には、第2次大戦後のアメリカを偉大にした歴代大統領を見習ってほしい──そう言うのは、オバマ政権による医療保険制度改革の骨格作りに参加したジョナサン・グルーバーだ。「アメリカ政府は戦後の数十年にわたり、公的なR&D(研究開発)予算をGDPの2%にまで増やし、科学教育に大規模な投資を行った。その成果がさまざまな先端技術であり、世界史上最も偉大な中間層の創出だった」

しかし、その後のR&D関連予算は他の先進諸国を下回ってきた。「結果として経済成長のペースは落ち、今では技術開発でも雇用の創出でも競合諸国に後れを取っている」と、グルーバーは言う。「それでもR&D予算をGDPの0.5%にまで増やし、一方で科学教育の拡充に総力を挙げれば、400万の良質な雇用が生まれ、アメリカは再び世界の技術革新の推進力になれる」

ただし政府の資金は、既にハイテク産業の集積している東西の沿岸部諸州に偏ってはいけない。なぜなら「次なる技術革新のハブとなるに足るスキルや高等教育機関があり、しかるべき生活の質を提供できる場所は国内に100以上もある」からだ。「政府資金の分配に当たっては、そうした場所を競わせるべきだ」と、グルーバーは言う。

失業者にもせめて最低賃金並みの給付を

■ロンダ・ボンシェイシャープ(「女性による科学・平等・人種研究所」創設者、経済学者)

わずかな失業給付で生活を維持するのに四苦八苦している世帯や、学校を出ても働き口のない子供を抱えて困っている家庭には何らかの救済措置が必要だ。人権派の活動家ロンダ・ボンシェイシャープはそう訴える。

例えば、わが子が成人に達しても、職がなければ26歳までは扶養家族として扱える制度。一度は就職したけれど失業して家に戻ってきた子や、まだ大学在学中の(あるいは卒業したけれど就職できない)子を26歳までは扶養家族と認め、景気対策で税控除の対象が広がった場合には、その恩恵を受けられるようにするような仕組みだ。

公的な失業給付も手厚くし、最低でも週に290ドル(連邦政府の定める最低賃金で1週間フルに働いた場合の賃金に相当)を給付すべきだと提案している。CNBCの報道によれば、現状では21の州で失業給付金が時給7.25ドル(連邦政府の定める最低賃金)に届いていない。だからボンシェイシャープは現実的な対策として、連邦政府の定める最低賃金にはこだわらず、その人が失業以前に稼いでいた金額と住んでいる州で定められた失業給付金額の中間値に相当する現金を給付するよう提案している。

さらにボンシェイシャープは、新型コロナウイルス対策に関連する費用(密集を避けるためのオフィスの改装費など)の捻出に困る小規模企業への積極的な助成も求めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

個人消費は持ち直しに向かうと期待、定額減税の効果な

ビジネス

世界のIPO、5月は前年比49%減の62億ドル=L

ビジネス

ルールが守られなかったのははなはだ遺憾=自動車大手

ビジネス

世界のM&A、5月は前年比2%増の2524億ドル=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危…

  • 6

    公園で子供を遊ばせていた母親が「危険すぎる瞬間」…

  • 7

    ガスマスクを股間にくくり付けた悪役...常軌を逸した…

  • 8

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 9

    ロシア軍が「警戒を弱める」タイミングを狙い撃ち...…

  • 10

    メディアで「大胆すぎる」ショットを披露した米大物…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 6

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中