最新記事

ビジネススキル

チェ・ゲバラから「ピッチ」の秘訣を学ぶ

2015年8月26日(水)18時30分

 作家の世界では、カリスマ性を持つものは滅多にいない。『キャッチ=22』が愛読されていても、作者のジョセフ・ヘラーの顔を思い出す人はどれほどいるだろうか。だが画家には、作家よりもカリスマ性を持つ人が多い。たとえばサルバドール・ダリは、金の亡者で性的欲求不満を抱えた老いぼれのろくでなしだったにもかかわらず、カリスマ性をにじませていた。だが同じシュールレアリスムの画家ルネ・マグリットは、ダリと並び立つ作品を描きながら、カリスマ性はなかった。生気を欠いた不安げなアンディ・ウォーホルはカリスマ性をもっていたが、彼と並ぶ才能の持ち主であるポップ・アーティスト、リヒテンシュタインとラウシェンバーグはそうではなかった。ピカソは絶大なカリスマ性の持ち主だったが、ピカソと共にキュビズムを生み出したジョルジュ・ブラックはというと、写真を見せられても誰だかわからないのではないだろうか。

 こうした魔術的才能を授かった特異な人物たちを眺めてみると、人さまざまだが、二つの共通した特徴があるようだ。第一に、人と違うことを恐れていないということ。第二に、これが重要なのだが、自分自身を楽しんでいるようにみえること。この二つの才能――私は才能だと思っている――をもう少し掘り下げてみよう。

 第一の、人と違うという点からいえば、ダリはワックスでヒゲを固め、滑稽なポーズを取り、擬似哲学的な芸術特有用語を並べ立て、できるだけ人と違ったように振る舞った。私たちが敢えてしないことをした。それが秘訣だった。

 ピカソとウォーホルも、周囲とかけ離れた別格の存在だった。ピカソは独創性に富んだ作品を数かぎりなく生み出しただけでなく、派手で気ままな生活を送り、次々と愛人を変えては新たな方向性の絵画への刺激剤にした。ウォーホルは作品をわざと大量生産することにより、一千年の芸術史を根本から覆した。自らのアトリエを「ファクトリー(工場)」などと呼んだりする芸術家が、他にいるだろうか。

 ウィンストン・チャーチルはもちろん、人と違うことを恐れなかった。大きな葉巻を常に口にくわえ、午前中はずっと眠り、夜通し働いて、バスタブに横になりながら重要な軍事機密文書を秘書に口述したばかりか、常人が一生かけて飲むほどのシャンパンを一週間で飲み干していた(これを戒めてベシー・ブラドック議員が「チャーチルさん、酔っていますね!」と言うと、彼が「いかにも、マダム。それにしてもあなたは不細工ですな。私の酔いは明日には覚めますがね」と答えたのは有名な話だ)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中