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2009.04.08

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レイコ・クルック(メーキャップアーティスト)

巨匠たちが頼る「顔面のシェフ」

2009年4月8日(水)18時41分
トレーシー・マクニコル

 10月8日、ニューヨークのメトロポリタン・オペラで幕が開いたモーツァルトのオペラ『魔笛』。舞台の上の魔法の一部は、レイコ・クルックが生み出したものだった。

 パリを拠点に活躍しているクルックは、舞台や映画などの「特殊メーク」の世界に飛び込んで30年以上。バレエのルドルフ・ヌレエフ、映画のベルナー・ヘルツォーク、舞台のジュリー・テイモアといったそうそうたる顔ぶれとも仕事をしたことがある。

 「生粋の日本人で、しかも西洋文化も深く理解している」と、オペラ『蝶々夫人』の映画版を一緒に制作しているフレデリック・ミッテラン監督は言う。「知的で創造的で、ある意味でとても強い。たぐいまれな人だと思う」

 長崎出身のクルックは、45年の原爆投下をよく覚えている。その体験を意図的に作品に投影することはしていないが、日本とカナダで開催した『皮膚の叫び』展を訪れた人たちは原爆を連想したようだ。原爆のトラウマは無意識に影響しているかもしれないと、クルックは認める。あの体験は「私の血管の中に染み込んでいる」。

 謙虚なクルックは、アーティストと名乗ることはしない。だが、別の肩書を自分に与えている。「私は顔面のシェフ」と、彼女は言う。料理人のように、「作品」の最初から最後まですべてに責任をもつからだ。最初の食材選び、つまりキャスティングもするし(「どんな名シェフも、腐った魚ではいい料理が作れないでしょ」)、最後の味見、つまり初日のカーテンコールにも顔を出す。

 ただし、この名料理人に「レシピ」を尋ねても無駄だ。「それはトップシークレット」だと、クルックは言う。

[2004年10月20日号掲載]

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