コラム

メドベージェフは後継本命から後退...プーチンが絶大な信頼を置く「影の実力者」とは

2022年10月19日(水)17時22分

プーチンも最初は無名だった

彼に言わせると、プーチンのサバイバル能力の高さは20年間にわたって自分の周囲を3つのタイプの人々で固めてきた結果だ。自分にひたすら忠実な人々と、宮廷革命を起こせるような知的または政治的な力や人脈のない人々、そしてカリスマ性や魅力に欠けて高位の公人にふさわしいという印象を与えない人々だ。

この友人は過去にもさまざまな予言を的中させている。そこで私はプーチンの後継者が誰になるかについても彼の意見を聞きたくなった。「プーチンが病気に負けたと仮定して、後継は誰だろう」と私は尋ねた。

だが友人はなかなか話に乗ってこなかった。健康不安説については何年も前から報じられていると私が指摘すると、プーチンなら肉体的な問題があっても復活のすべを見つけ出すとか、もしそれが不可能な場合には憲法上は首相が後を継ぐことになっていると言葉を濁すのだ。答えに満足できずに私がさらに追及すると、国家安全保障か軍の関係者であることは間違いない、と友人は述べた。

もう1人の知人でロシア人の元ジャーナリストは、ウクライナにおけるロシア軍の後退はプーチン支持率低下の要因にはならないだろうと語った。「ロシアは民主国家ではない。われわれ(国民)は蚊帳の外に置かれている。われわれは統治される側であり、傍観者だ。われらがツァーリ(ロシア皇帝)は戦争に負けつつあり、それは彼にとってよくないことだ」と、この知人は述べた。

「略奪や強姦や殺人を犯す可能性があるにもかかわらず、彼は受刑者から新兵を募っている。ロシアでは、まともな人ならそんな行動を自分の国の出来事と考えたりしない。ツァーリが戦争に負けたら、確かに問題の一部は人ごとではなくなるだろう。増税が避けられない、という意味でだが、どうしようもないことだ」

プーチンは過去23年間、ロシアで盤石の権力基盤を築いてきた。だが24年前の彼は、エリツィンの後継者として抜擢されただけの、全国的にはほぼ無名の人物だった。この人選の決め手になったのはプーチンの忠誠心だったというのが一般的な見方だ。エリツィンとその周辺の人々は、プーチンなら退任後もエリツィンを守ってくれるだろうと思ったに違いない、と。

さて、もしプーチンが死亡するか、もしくはその前に後継者を指名するとしたら誰か。以下に挙げるのは最も有力な候補とみられている人々だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド、米国との貿易協議継続へ 関税50%に引き上

ワールド

トランプ氏、首都ワシントンに州兵派遣 警察を連邦政

ビジネス

アングル:統計局長解任で高まる米CPIの注目度、T

ワールド

トランプ米大統領、E・J・アントニー氏を労働統計局
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 7
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story