コラム

どこか不可思議な、動物と少女のポートレート

2017年06月15日(木)11時45分

From Robin Schwartz @robin_schwartz

<15年以上、自分の娘と犬や猫、猿、カンガルーなどの動物を一緒に撮り続けてきた写真家ロビン・シュワルツ。この写真、実に謎である>

動物は、多くの写真家が好んで被写体に使うものの1つ。今回紹介する米ニュージャージー州在住のロビン・シュワルツもそうした1人だ。ただし、彼女の写真は、動物の可愛らしさや、あるいは野生動物に焦点を当てたものではない。人間を含めた動物たちを種としてとらえ、その関係性を探り求めている。

すでに写真集を4冊出しているが、なかでも、自分の娘アメリアと動物たちをポートレート的に一緒に撮影したシリーズがまさにそれだ。娘が生まれた時に始め、3歳の時から本格的に撮影し、以来15年間続けているプロジェクトである。

2008年に『Amelia's World』、2014年には『Amelia & the Animals』としてアパチャーから出版され、2016年にはグッゲンハイム・フェローシップを受賞している。

【参考記事】Picture Power 捨て犬支援はスタイリッシュに

娘以外の被写体の多くは犬、猫、そして猿だ。加えてカンガルーや虎、象、七面鳥などもあり、多様である。こう書き並べると動物紹介シリーズのように聞こえるが、シュワルツがつくり出している世界の最大の魅力は、アメリアと動物たちとの間に流れている途方もない不可思議な親密感である。

実に謎である。動物たちがシュワルツの娘アメリアを同じ種として眺めているのである(あるいは「扱っている」とも言える)。アメリア自身も、そうした動物たちを人間として見ている観がある。こうした世界を見せつけられると、まれに飛び込んでくる、狼などが人間の子供を自らの子供として育てたというニュースなどは、単なる自然の摂理であるとさえ思えてくる。

こうした親密的な繋がりは、もう1つの親密性を放つ源がなければ存在し得ない。もちろん、写真を撮っている母親のシュワルツである。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月の米雇用、民間データで停滞示唆 FRBは利下げ

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、政府閉鎖の

ワールド

ハマスに米ガザ和平案の受け入れ促す、カタール・トル

ワールド

米のウクライナへのトマホーク供与の公算小=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story