コラム

好発進の民主党ハリス候補、打倒トランプのカギは「格差問題」

2024年07月24日(水)11時45分

その左派の一部は、「Kハイブ」というニックネームで呼ばれるハリス氏の支持者グループと激しく対立した過去もあります。また、左派の中では、ウォーレン議員は支持に回ったものの、リーダー格であるサンダース、オカシオコルテスの両議員は、ハリス氏への最終的な支持はまだ表明していません。

仮に党内左派の全面的な支持を受けることができないと、2016年に多くの若者が棄権することでヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に負けた選挙の再現になってしまいます。格差問題に関する柔軟で時代に適応した政策を打ち出し、党内左派を取り込むことはハリス氏にとって非常に重要です。


もう1つの敵はトランプ陣営そのものです。トランプ陣営は「忘れられた白人層」を代表すると言って良いJ.D.バンス上院議員を副大統領候補に指名することで、この国内格差問題において「自分たちこそ苦しんでいる労働者の代表」というイメージを確固たるものにしています。

まずは「格差解決」策で党内左派を味方に

彼らの戦術は、庶民の味方は自分たちであり、人権派を自称するハリス陣営はエリートの代表というイメージを作り上げることだと思います。万が一このパターンにはまると、接戦州での勝利は難しくなってしまいます。

ハリス氏の父親は、UCバークレーを出て長年スタンフォードの教授を努めた経済学者です。ケインズ後の経済学の先端にいた人で、柔軟な考えの人のようですが自由経済を大前提にしている人であることは間違いありません。母国ジャマイカの経済成長戦略にも深く関与しており、ハリス氏自身は、その父親の影響を強く受けているようです

そのハリス氏には、左派の主張を丸呑みするようなバイデン流の政治的取引は馴染まないのかもしれません。ならば、21世紀の現在において、人権だけでなく、父親が一生を捧げたように経済問題においても「全体の成長により格差を解決」する思想を打ち立てるべきです。その上で党内左派の積極的な支持を取り付けて、トランプ/バンスという難敵と正々堂々と戦う、この正面突破作戦こそがハリス政権を実現する近道だと思います。

【関連記事】
カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5つの理由
トランプ暗殺未遂で「団結」を実現した共和党、分裂に直面する民主党

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブラックフライデーの米オンライン売上高は過去最高、

ワールド

北朝鮮の金総書記、空軍の核戦争抑止力を強調 式典で

ビジネス

中国製造業PMI、11月は8カ月連続50割れ 非製

ワールド

米・ウクライナ、30日にフロリダで会談 和平案協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税」...なぜ他国には真似できない?
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story