コラム

トランプ支持者が抱える、ある深刻な分裂

2017年01月19日(木)13時40分

 このまったく異なる「コア支持層」と「共和党本流」は選挙戦の最初から水と油でした。ですから、共和党予備選を通じてトランプ氏と、例えば後者の代表だったジェブ・ブッシュ候補などは激しい中傷合戦を繰り広げましたし、その後2016年春にトランプ氏の優位が見えてきた際には、共和党の本流は「トランプ降ろし」を必死になって画策したのです。

 では、そんな両者がどうして共存しているのかというと、それは「オバマ時代の政治をひっくり返したい」とか「ヒラリー・クリントンの政策を否定したい」という、心理的な衝動としては共通するものがあったからです。

 ですが、今週20日の就任式を境に、政治的な環境は変わります。オバマの時代は歴史の彼方、つまり「過去」へと飛び去っていくのであり、トランプ氏とその周囲はホワイトハウスという行政府を動かして、国政を担って行かなければなりません。一方で、共和党の本流にいる多くの議会メンバーは、個々人の選挙区の意向を反映させながら自分の政治をやっていかなければなりません。

 対立の火種は至る所に転がっているのです。では、そんな対立を抱えながらトランプはどのように政権運営していくのでしょうか?

 結局は、「中身としては是々非々」にならざるを得ないと思います。

【参考記事】日本はワースト4位、「経済民主主義指数」が示す格差への処方箋

 景気を維持するためには、株価を維持しなくてはならず、そのためには企業業績は悪化させることはできません。ですから大企業優遇の政策は実行に移されるでしょう。ですが、選挙で自分を選んだ有権者の期待にも応えなければなりません。ですから、世間の話題になりそうなテーマについては「劇場型パフォーマンス」を続けていくことになるでしょう。

 自動車産業への介入が良い例で、メキシコに工場が流出する空洞化に関しては強硬に否定していますが、これは一種のシンボル的な動きであり、そのような「規制」を全産業に対して発動するわけではありません。フォード社などが「おとなしく」従っているように見えるのは、トランプ支持者の不買運動が怖いということもあるかもしれませんが、「全体としては悪いようにはしないだろう」という読みがあるのだと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、冬季パラ公式行事ボイコットへ ロシア参

ワールド

ウクライナ和平協議、2日目は2時間で終了 「困難な

ビジネス

米耐久財コア受注、25年12月は0.6%増 出荷も

ビジネス

米一戸建て住宅着工、12月は4.1%増の98.1万
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 10
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story