コラム

バイデン「日本憲法は我々が書いた」発言をどう理解すればいいか

2016年08月18日(木)17時00分

Charles Mostoller-REUTERS

<ヒラリーの応援演説でバイデン副大統領から飛び出した「日本の憲法は我々が書いた」発言は、民主党の中でも古い世代の日本観が露出したもの。ヒラリーの対日外交を不安視する必要はない>(写真は15日にヒラリーの応援演説で壇上に立ったバイデン)

 暴言というと、昨今のアメリカではドナルド・トランプ候補の専売と思われていましたが、こともあろうにオバマ政権の中枢にいるはずのジョー・バイデン副大統領の口から、奇妙なセリフが飛び出したのには驚きました。

 今週15日にペンシルベニア州で大統領候補のヒラリー・クリントンのキャンペーンに合流して演説をした際、バイデンは次のように語っています。

「Does he not realize we wrote the Japanese constitution so they could not own a nuclear weapon? Where was he in school? Someone who lacks this judgement cannot be trusted.(核武装を持てないように我々が日本の憲法を書いたことを、彼は知らないのではないか。彼は学校で習わなかったのか。トランプは判断力に欠けており、信用できない)」

 非核3原則は憲法条文ではないこと、9条に関してはいわゆる芦田修正を含めて100%占領軍サイドの起草とは言えないこと、何よりも緊密な同盟関係にある日本の「国のかたち=コンスティテューション」への敬意に欠けることなど、批判をするのは簡単です。

 とは言え、この「暴言」の意味を、どう理解したら良いのでしょうか?

【参考記事】トランプがイスラム過激派対策で公約した「思想審査」がオランダにあった

 まず、ジョー・バイデンという人について言えば、2008年までの上院議員時代には「暴言大魔王」で有名だったという事実があります。とにかく、思ったことを口にする、事実関係の曖昧なことでも平気で喋ってしまうという性格の人物だったのです。

 有名なのは、1988年の大統領予備選に向けて前年に出馬した際、カッコいいスピーチをしたのですが、それが他の人物の「パクリ」であることが露見して、予備選から脱落、政治生命も危うくなる事態に追い込まれたというエピソードです。

 最近でも、オバマ大統領のことを「バラク・アメリカ」と言ったとか、車椅子の政治家に向けて「では立って下さい」と言ったとか、とにかく失言は「筋金入り」です。あとはセクハラすれすれの言動もこの人の専売特許で、お人柄に免じて許されている面があります。

 そうは言っても、今回の発言は「笑って済ませられない」内容だとも言えます。では、正式に抗議したり、警戒したりするべき内容なのでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ロシア・ロスネフチ、1─9月期は7割減益 高金利や

ワールド

ベセント米財務長官、「不法在留外国人」への税還付停

ワールド

米国務長官、ウクライナ和平協議進展に楽観的 合意に

ビジネス

ブラックフライデーの米オンライン売上高は過去最高、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story