コラム

民意反映のためには党議拘束を解除すべき

2015年09月24日(木)16時00分

 もう一つは、民主党以外にも維新があり、その維新は東京中心の野党連合志向と、大阪中心の「民主とは組めない」グループに分裂しかかっているなど、仮に自民党と公明党の与党を少数政党に追い込んでも、まともな連立内閣はできそうもない、つまり野党に政策の一致点が少ないという問題があります。

 では、「強力な、そして政権担当能力のある野党」が出現するまでは、ある種の擬似独裁政権として、自民党を中心とした政権が継続し、その意向を反映した法律や制度が次々に成立していくのでしょうか?

 確かに今のままではそうした傾向が続きそうです。ですが、仮に統治能力があるというだけで信任を受けていても、世論の反対する法律や制度をどんどん導入していってしまっては、政権はどこかで崩壊します。

 では、どうすれば良いのでしょうか?

 一つ簡単な解決法があります。党議拘束を止めれば良いのです。

 日本は議院内閣制ですから、首班指名選挙は党議拘束が必要でしょう。また予算の採決にあたっての拘束は残しても良いかもしれません。ですが、その他の個々の法案に関しては、党議拘束を外して、各議員は自分の選挙区やエリアの有権者、支持者の声に従って投票すれば良いのです。

 そうなれば、民意に反した採決行動はできなくなります。当選1回の議員が、ベテラン議員の下で「陣笠」をやるなどというようなバカバカしい「一票の格差」もなくなります。そもそも、現在の党議拘束のもとでは「若者の声を国会に」とか「女性の視点を国政に」などというスローガンは、ほとんどが空虚な掛け声に過ぎないわけです。

 党議拘束がなくなれば、その時の世論に対してかなり忠実な動きを各議員はしなくてはならなくなります。そうなれば、法案に関して「理解が進まない」という状況に対しては、もっともっと努力をするようになるでしょうし、世論も「ムードで反対」とか「良く分からないが決め方が拙速だから反対」などという甘えたことを言うのは許されず、真剣に法案に対する賛否を考えなくてはならなくなるでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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