コラム

「同一労働・同一賃金」はどうして難しいのか?

2014年12月04日(木)10時53分

 同じ仕事をしたら同じ賃金をもらう、これは極めて当たり前のことのように思えます。事実、欧州では多くの専門職の仕事が「ワークシェアリング」の対象とされており、フルタイムの人も、パートタイムの人も時給換算では同じ賃金をもらっています。

 私の住むアメリカでは、そこまで一般的ではありませんが、例えば子育て中の世代などで、時給制弁護士、時給制医師といったものがあります。本来は年収1800万の小児科医が、一時期だけ勤務時間を半分にしている場合には、年収は900万になるわけです。

 アメリカの場合は、「ワークシェアリング」はまだ少ないのですが、同一労働・同一賃金という原則は極めて厳格に守られています。これに違反すると巨大な訴訟リスクを抱えることになるからです。そのために、「賃金の違う人は、相手の業務を奪ってはならない」ということも徹底しています。

 例えば、学校で床の清掃をするのはジャニターという職種ですが、仮にジャニターよりも時給換算の給与の高い校長先生が、「ちょっと床が汚れているからチャッチャッと掃除してしまった」などということが露見するとマズいことになります。それはジャニターの雇用機会を奪うと同時に「同一労働・同一賃金」に反することになるからです。もちろんアメリカにも臨機応変な現実主義というカルチャーはあるので、実際の運用は柔軟ですが、原則はそうであり、仮にジャニターの側からの「異議申し立て」があればシリアスな問題になります。

 では、この「同一労働・同一賃金」というのは、日本の場合どうして実現が難しいのでしょう? 具体的に言えば、同じ仕事をしていても、非正規労働者や派遣社員の賃金と、フルタイムの正社員の賃金には2倍、福利厚生まで入れると2倍半以上の格差があるわけです。

 これは明らかな不公平です。では、どうしてこのような不公平が放置されているのでしょうか? どうして「同じ仕事をしたら、同じ賃金を払う」という当たり前のことができないのでしょう?

 まるで正社員と、非正社員というのが身分制になっているかのようです。多くの非正規雇用者や第三者は、そのような「いわれなき差別」を感じていると思います。なぜ、そんな理不尽が許されているのでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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